喉頭気管分離術における前頸筋群を使用した筋弁の有用性

【目的】重症心身障碍児の繰り返す難治性誤嚥性肺炎に対して,喉頭気管分離術(laryngotracheal separation,以下LTS)が一般的に行われている.合併症を減らし長期管理しやすい術式が必要であり,様々な工夫を行ってきた.今回気管断端瘻に対して前頸筋群による筋弁が有用かを後方視的に検討した.【方法】2010年3月よりH型皮弁形成によるLTSを採用し,2012年1月より前頸筋群による筋弁を頭側気管断端に縫合被覆する術式を加えた.2010年6月から2017年5月の過去6年間に行った77例を対象に筋弁の有用性について検討を行った.筋弁を使用していない17例をI群,筋弁を使用した60例を...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 54; no. 6; pp. 1204 - 1209
Main Authors 下高原, 昭廣, 石岡, 茂樹, 下島, 直樹, 藤村, 匠, 内田, 豪気, 廣部, 誠一, 加藤, 源俊, 春松, 敏夫, 富田, 紘史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.10.2018
日本小児外科学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.54.6_1204

Cover

More Information
Summary:【目的】重症心身障碍児の繰り返す難治性誤嚥性肺炎に対して,喉頭気管分離術(laryngotracheal separation,以下LTS)が一般的に行われている.合併症を減らし長期管理しやすい術式が必要であり,様々な工夫を行ってきた.今回気管断端瘻に対して前頸筋群による筋弁が有用かを後方視的に検討した.【方法】2010年3月よりH型皮弁形成によるLTSを採用し,2012年1月より前頸筋群による筋弁を頭側気管断端に縫合被覆する術式を加えた.2010年6月から2017年5月の過去6年間に行った77例を対象に筋弁の有用性について検討を行った.筋弁を使用していない17例をI群,筋弁を使用した60例をII群として比較検討を行った.【結果】手術時年齢はI群―中央値3歳6か月,II群―中央値4歳5か月.男女比はI群―12例:5例,II群―35例:25例.平均手術時間の比較は,気管切開(+)ではI群76.85分,II群94.85分で有意差を認めた(p=0.031).気管切開(-)ではI群83分,II群91.87分で有意差を認めなかった(p=0.371).出血量は全例少量であり術中合併症は認めなかった.術後合併症としてI群では肉芽形成(64.7%),気管断端瘻(11.7%),II群では肉芽形成(75%),皮膚潰瘍(3.3%),創離開(3.3%),心停止(1.6%)を認めた.合併症では気管断端瘻のみ両群間で有意差を認めた(p=0.046).【結論】重症心身障碍児に対するLTSにおいて,筋弁の使用は気管断端瘻のリスク低減が期待され,安全な長期管理が行えると考えられた.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.54.6_1204