梅雨期における温帯低気圧の東進に伴う空間放射線量率の上昇機構

「I 緒論」空間放射線量率(以下, 線量率)は, 原子力施設の周辺環境監視等のため全国のモニタリングポスト(以下, MP)で測定されている. 通常, 線量率は降雨雪などの自然現象によって一時的・局所的に上昇するが, まれに広範囲にわたって顕著に上昇する現象が観測される(例えば宮城県, 岡山県). このような降雨雪による線量率の著しい上昇は, 原子力施設からの人工放射線の影響を監視する上では妨害となるため, 自然放射線の変動要因を詳細に把握することは重要である. 降雨雪の影響による線量率の変動幅や最大値の出現時期には, 地域差がみられる. 猪俣らによる全国の線量率データの統計解析では, 内陸や太...

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Published in保健物理 Vol. 55; no. 1; pp. 5 - 14
Main Authors 土田, 大輔, 矢口, 廉大奈, 山澤, 弘実, 楢崎, 幸範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本保健物理学会 01.04.2020
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Summary:「I 緒論」空間放射線量率(以下, 線量率)は, 原子力施設の周辺環境監視等のため全国のモニタリングポスト(以下, MP)で測定されている. 通常, 線量率は降雨雪などの自然現象によって一時的・局所的に上昇するが, まれに広範囲にわたって顕著に上昇する現象が観測される(例えば宮城県, 岡山県). このような降雨雪による線量率の著しい上昇は, 原子力施設からの人工放射線の影響を監視する上では妨害となるため, 自然放射線の変動要因を詳細に把握することは重要である. 降雨雪の影響による線量率の変動幅や最大値の出現時期には, 地域差がみられる. 猪俣らによる全国の線量率データの統計解析では, 内陸や太平洋側に比べ日本海側のMPは線量率の年間変動幅が大きく, 線量率最大値も高い傾向がみられる. また, 藤波らによると, 線量率の年間最大値が出現する時期は, 太平洋側では明確な季節差は認められていないが, 日本海側では11~1月の冬季に多いことが示されている.
ISSN:0367-6110
1884-7560
DOI:10.5453/jhps.55.5