NOX1/NADPH oxidaseはドパミンD2受容体を介した線条体のシナプス増強を促進することで強迫様行動の誘発に関与する

「1. はじめに」思考柔軟性の欠如による物事への過剰なこだわりや固執は, 強迫的な反復行動として表出し, 強迫性障害や各種依存症を筆頭に様々な精神神経疾患において問題となっている. こうした強迫性を示す疾患の患者では, 柔軟な意思決定を担う線条体においてドパミンD2受容体の結合能異常などのドパミンシグナル異常が共通して報告されている. また, 同様の強迫的反復行動は, パーキンソン病治療薬などのドパミン系刺激作用を持つ薬物の長期服用によっても出現することからも, 線条体ドパミンシグナル異常と強迫性の発現との関連性が示唆されるが, 両者をつなぐ神経メカニズムは未解明である. 強迫的反復行動に対す...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 142; no. 11; pp. 1137 - 1143
Main Author 浅岡, 希美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.11.2022
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」思考柔軟性の欠如による物事への過剰なこだわりや固執は, 強迫的な反復行動として表出し, 強迫性障害や各種依存症を筆頭に様々な精神神経疾患において問題となっている. こうした強迫性を示す疾患の患者では, 柔軟な意思決定を担う線条体においてドパミンD2受容体の結合能異常などのドパミンシグナル異常が共通して報告されている. また, 同様の強迫的反復行動は, パーキンソン病治療薬などのドパミン系刺激作用を持つ薬物の長期服用によっても出現することからも, 線条体ドパミンシグナル異常と強迫性の発現との関連性が示唆されるが, 両者をつなぐ神経メカニズムは未解明である. 強迫的反復行動に対する薬物治療は, 強迫性障害に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬が認可されているのみであり, 治療抵抗例も多いことから, 神経メカニズムの解明と新規治療標的の開発が求められている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.22-00125