未踏薬学領域の開拓を目指す5年一貫制博士課程—学生は「教わる」から「学ぶ」へ,教員は「教える」から「支援する」へ

「はじめに」京都大学大学院薬学研究科は, 1953年の創設以来, 創薬と育薬の基礎となる最先端の生命科学研究を通じた教育により, 多くの博士及び修士の学位取得者を学界のみならず製薬業界へ輩出し, 人類の健康と社会の発展に貢献してきた. 例を挙げると, 1985年から1994年まで教授として在籍した藤多哲朗名誉教授が, 台糖株式会社 (現「三井製糖株式会社」) と吉富製薬 (現「田辺三菱製薬」) との共同研究から発明したfingolimod (FTY72) は, 世界初の多発性硬化症経口治療薬 (商品名イムセラ/ジレニア) として2010年に米国, 2011年に日本で発売され, 2年後には, い...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 143; no. 10; pp. 827 - 834
Main Author 加藤, 博章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.10.2023
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.23-00083-6

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Summary:「はじめに」京都大学大学院薬学研究科は, 1953年の創設以来, 創薬と育薬の基礎となる最先端の生命科学研究を通じた教育により, 多くの博士及び修士の学位取得者を学界のみならず製薬業界へ輩出し, 人類の健康と社会の発展に貢献してきた. 例を挙げると, 1985年から1994年まで教授として在籍した藤多哲朗名誉教授が, 台糖株式会社 (現「三井製糖株式会社」) と吉富製薬 (現「田辺三菱製薬」) との共同研究から発明したfingolimod (FTY72) は, 世界初の多発性硬化症経口治療薬 (商品名イムセラ/ジレニア) として2010年に米国, 2011年に日本で発売され, 2年後には, いわゆるブロックバスター (年間の売り上げが10億ドルを超える医薬品) として治療に貢献している. さらに, この化合物はスフィンゴシン1-リン酸とその受容体の基礎研究をも大きく発展させた. 同研究科は1997年には大学院重点化による組織改革が行われ大学院の学生定員が倍増するとともに, 研究領域が臨床薬学にも拡大された.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.23-00083-6