呼吸不全を伴った食道癌術後カイローマの1例
I「緒言」食道癌術後の乳び胸は, 比較的稀な合併症であり, その管理についての報告が少ないのが現状である. 今回我々は, 食道癌術後の乳び胸から縦隔内リンパ嚢胞(以下カイローマ)を形成し, MRSA感染を契機にカイローマの増大をきたし, 呼吸不全を認めた症例を経験したので報告する. II「症例」患者:55歳, 男性. 家族歴, 既往歴:特記すべきものなし. 現病歴:胸部上部食道~胸部下部食道の食道癌に対して胸腔鏡下食道亜全摘(D2), 腹腔鏡補助下胃管再建術を施行した. 病理組織所見では扁平上皮癌, pT1b, pN2:pStageIIIであった. 術後急性期に縫合不全や呼吸器合併症を認めなか...
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Published in | 信州医学雑誌 Vol. 54; no. 4; pp. 197 - 201 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
信州医学会
2006
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0037-3826 1884-6580 |
DOI | 10.11441/shinshumedj.54.197 |
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Summary: | I「緒言」食道癌術後の乳び胸は, 比較的稀な合併症であり, その管理についての報告が少ないのが現状である. 今回我々は, 食道癌術後の乳び胸から縦隔内リンパ嚢胞(以下カイローマ)を形成し, MRSA感染を契機にカイローマの増大をきたし, 呼吸不全を認めた症例を経験したので報告する. II「症例」患者:55歳, 男性. 家族歴, 既往歴:特記すべきものなし. 現病歴:胸部上部食道~胸部下部食道の食道癌に対して胸腔鏡下食道亜全摘(D2), 腹腔鏡補助下胃管再建術を施行した. 病理組織所見では扁平上皮癌, pT1b, pN2:pStageIIIであった. 術後急性期に縫合不全や呼吸器合併症を認めなかった. しかし右胸水量の減少が認められず, 800~1,800ml/日の胸水の排液が認められた. 胸管損傷による乳び胸と判断し, 術後第11病日に胸腔鏡下胸管結紮術を施行した. 胸水排液量の経過を図1に示す. 再手術後, 胸水は徐々に減少したが, 再手術後第11病日に無断で経口摂取をしたところ, 一時的に胸水の著明な増量を認め, その後縦隔内にカイローマの形成が認められた. 徐々に胸水排液量は減少し, 1ヵ月半程度50~100ml/日の胸水が持続して排液された. |
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ISSN: | 0037-3826 1884-6580 |
DOI: | 10.11441/shinshumedj.54.197 |