悪性胸水に対する局所麻酔下胸腔鏡の役割 : 胸部CTで悪性胸膜疾患を疑う病変がみられない症例に対する検討

背景.局所麻酔下胸腔鏡検査は悪性胸水が疑われる症例の組織学的診断のために用いられている.しかし,胸部CTで悪性胸膜疾患を疑う病変(悪性胸膜病変)がみられない症例に関する,組織学的診断に至る因子の検討は見当たらない.対象と方法.2007年5月から2013年2月まで局所麻酔下胸腔鏡検査を施行した71例を後ろ向きに調査した.悪性胸水と診断されたもののうち,胸部CTで悪性胸膜病変がみられなかった症例に対し,胸水や血液検査値,胸腔の内視鏡的所見について,組織学的に診断できた群(生検診断群)とできなかった群(生検未診断群)で比較検討した.結果.胸部CTで悪性胸膜病変がみられなかったものは癌性胸膜炎,悪性胸...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 37; no. 3; pp. 279 - 284
Main Authors 中川, 淳, 川村, 卓久, 大塚, 今日子, 玉井, 浩二, 富井, 啓介, 松本, 健, 永田, 一真, 藤本, 大智, 大塚, 浩二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2015
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.37.3_279

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Summary:背景.局所麻酔下胸腔鏡検査は悪性胸水が疑われる症例の組織学的診断のために用いられている.しかし,胸部CTで悪性胸膜疾患を疑う病変(悪性胸膜病変)がみられない症例に関する,組織学的診断に至る因子の検討は見当たらない.対象と方法.2007年5月から2013年2月まで局所麻酔下胸腔鏡検査を施行した71例を後ろ向きに調査した.悪性胸水と診断されたもののうち,胸部CTで悪性胸膜病変がみられなかった症例に対し,胸水や血液検査値,胸腔の内視鏡的所見について,組織学的に診断できた群(生検診断群)とできなかった群(生検未診断群)で比較検討した.結果.胸部CTで悪性胸膜病変がみられなかったものは癌性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫ともに11例であった.生検診断群は癌性胸膜炎,悪性胸膜中皮腫ともに5例(45%)であった.悪性胸膜中皮腫では,胸腔内観察時の腫瘤は生検診断群が未診断群と比較して有意に多かった(あり/5/0 vs. 1/5, p=0.015).胸水や血液検査値は両群で有意差を認めなかった.癌性胸膜炎では7例(64%)で胸腔内に腫瘤を認め,うち4例(57%)で組織学的に診断,悪性胸膜中皮腫では6例(55%)で胸腔内に腫瘤を認め,うち5例(83%)で組織学的に診断された.結語.胸部CTで悪性胸膜病変がみられなかった症例において,局所麻酔下胸腔鏡検査での内腔観察による腫瘤の確認が組織学的診断に寄与する可能性があり,積極的な内腔観察が重要であると考えられる.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.37.3_279