ペメトレキセドを含まない化学療法により完全奏効が得られた上皮型悪性胸膜中皮腫の1例

背景.悪性胸膜中皮腫は治療に抵抗する予後不良の腫瘍である.非切除例の生存期間は10〜12か月であり,化学療法で完全奏効(CR)が得られることは稀である.症例. 74歳女性,主訴は右胸部痛,アスベスト曝露歴がある.胸部圧迫感を自覚し近医を受診,右胸水貯留の指摘を受け来院した.胸水細胞診では癌胎児性抗原(CEA)染色陰性,カルレチニン染色陽性の悪性細胞が認められ,悪性胸膜中皮腫が強く疑われた.局所麻酔下胸腔鏡検査では,壁側胸膜に多数の顆粒ないし小豆大の腫瘍が散在していたが,臓側胸膜には明らかな腫瘍性病変は認めなかった.壁側胸膜の腫瘍を生検し,上皮型悪性胸膜中皮腫の診断を得た. Internatio...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 34; no. 3; pp. 228 - 233
Main Authors 安光, 亮洋, 田村, 邦宣, 福岡, 和也, 中野, 孝司, 金村, 晋吾, 田端, 千春, 小牟田, 清, 塚本, 吉胤, 柴田, 英輔, 大搗, 泰一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2012
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.34.3_228

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Summary:背景.悪性胸膜中皮腫は治療に抵抗する予後不良の腫瘍である.非切除例の生存期間は10〜12か月であり,化学療法で完全奏効(CR)が得られることは稀である.症例. 74歳女性,主訴は右胸部痛,アスベスト曝露歴がある.胸部圧迫感を自覚し近医を受診,右胸水貯留の指摘を受け来院した.胸水細胞診では癌胎児性抗原(CEA)染色陰性,カルレチニン染色陽性の悪性細胞が認められ,悪性胸膜中皮腫が強く疑われた.局所麻酔下胸腔鏡検査では,壁側胸膜に多数の顆粒ないし小豆大の腫瘍が散在していたが,臓側胸膜には明らかな腫瘍性病変は認めなかった.壁側胸膜の腫瘍を生検し,上皮型悪性胸膜中皮腫の診断を得た. International Mesothelioma Interest Group (IMIG)分類T1N0M0の臨床病期診断の下に,シスプラチン+イリノテカン+ドキソルビシンによる併用化学療法を4コース実施した. 2コース終了時より胸水は減少し, 4コース終了後の胸部コンピューター断層写真(CT)ではCRが認められた.化学療法開始から56か月後に,胸水の再貯留を認め進行(PD)となった.現在, performance status (PS)1,担癌生存中である.結論.本例は上皮型,早期臨床病期,PS良好,女性,血小板数増加,正常白血球数などの多くの好条件を有し,化学療法によりCRが得られている.悪性胸膜中皮腫は治療に抵抗する腫瘍であるが,好条件の予後因子が揃えば,化学療法が期待できることを示唆する症例であり,また,その早期診断に局所麻酔下胸腔鏡検査が有用であることを示す重要な症例である.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.34.3_228