医療経済効果からみた,コンベックス走査式超音波気管支鏡ガイド下生検(EBUS-TBNA)の有用性

目的.EBUS-TBNAは,肺癌症例におけるリンパ節転移診断において,その高い診断率と安全性により,急速に普及しつつある検査法である.今回,とくに縦隔鏡との比較を中心に,EBUS-TBNAの与える医療経済効果について検討した.方法.現在,日本で施行されている縦隔鏡検査は,2003年度社会医療診療行為別調査によると,約1,000件である.これらにEBUS-TBNAを施行したとし,EBUS-TBNAにより診断できない症例に対し縦隔鏡検査を施行すると仮定した.縦隔鏡検査およびEBUS-TBNA1例当たりにかかる費用をそれぞれ算出し,これらの検査にかかる年間総費用を比較した.なお,EBUS-TBNAの...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in気管支学 Vol. 29; no. 6; pp. 337 - 341
Main Authors 中島, 崇裕, 安福, 和弘, 藤原, 大樹, 鈴木, 秀海, 長門, 芳, 山田, 義人, 矢代, 智康, 千代, 雅子, 伊豫田, 明, 吉田, 成利, 鈴木, 実, 関根, 康雄, 渋谷, 潔, 藤澤, 武彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2007
日本呼吸器内視鏡学会
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:目的.EBUS-TBNAは,肺癌症例におけるリンパ節転移診断において,その高い診断率と安全性により,急速に普及しつつある検査法である.今回,とくに縦隔鏡との比較を中心に,EBUS-TBNAの与える医療経済効果について検討した.方法.現在,日本で施行されている縦隔鏡検査は,2003年度社会医療診療行為別調査によると,約1,000件である.これらにEBUS-TBNAを施行したとし,EBUS-TBNAにより診断できない症例に対し縦隔鏡検査を施行すると仮定した.縦隔鏡検査およびEBUS-TBNA1例当たりにかかる費用をそれぞれ算出し,これらの検査にかかる年間総費用を比較した.なお,EBUS-TBNAの診断率は,過去の我々の報告から96.3%とし,合併症に対する治療などは本試算では考慮していない.結果.縦隔鏡検査1例当たりにかかる費用を,検査・生検費用,麻酔費用,入院費用に分類し,検査時間を90分,入院期間を4日間と仮定したところ,縦隔鏡1例当たりの医療費は271,220円と推定された.これに対し,EBUS-TBNA1例当たりにかかる費用は,医療機器使用料,人件費,医療材料,その他を積算した結果,64,700円となった.縦隔鏡検査に代わりEBUS-TBNAによる診断を行うとすると,総額約1億9,648万円の医療費削減になると推定された.結論.EBUS-TBNAの普及は,日本で施行されている縦隔鏡検査症例を対象としただけでも,年間に2億円近くの医療費削減につながる可能性がある.ただし本邦では,縦隔鏡検査の対象となっている症例は欧米と比較して少なく,正しいstagingに基づく,適切な治療方針の選択が可能であることを考えると,その医療経済効果は計り知れない.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.29.6_337