気管支鏡検査により診断しえた, Nocardia brasiliensis による肺ノカルジア症の 1 例

症例は生来健康な54歳男性, 大酒家。乾性咳嗽, 倦怠感にて本院受診。両肺に多発浸潤影を認め, 随時血糖206mg/dlであった。入院時の喀痰検査でノカルジアが疑われ, 入院4日目に気管支鏡を施行したところ, 採取した検体のすべてからノカルジアを検出し肺ノカルジア症と診断した。のちにNocardia brasiliensisと同定した。sulfamethoxazole-trimethoprim(ST合剤)の投与で臨床症状は著明に改善したが, 開始約2週間後から白血球減少をきたしたためminocyclineに変更した。その後も臨床症状は順調に改善した。肺ノカルジア症は, 喀痰からの菌検出率は低く...

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Published in気管支学 Vol. 18; no. 2; pp. 146 - 152
Main Authors 井上, 哲郎, 種田, 和清, 郡, 義明, 田口, 善夫, 富井, 啓介, 松村, 榮久, 三野, 真里, 郷間, 巌, 高野, 義久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 1996
日本気管支学会
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Summary:症例は生来健康な54歳男性, 大酒家。乾性咳嗽, 倦怠感にて本院受診。両肺に多発浸潤影を認め, 随時血糖206mg/dlであった。入院時の喀痰検査でノカルジアが疑われ, 入院4日目に気管支鏡を施行したところ, 採取した検体のすべてからノカルジアを検出し肺ノカルジア症と診断した。のちにNocardia brasiliensisと同定した。sulfamethoxazole-trimethoprim(ST合剤)の投与で臨床症状は著明に改善したが, 開始約2週間後から白血球減少をきたしたためminocyclineに変更した。その後も臨床症状は順調に改善した。肺ノカルジア症は, 喀痰からの菌検出率は低く, 一方健康人の喀痰から菌が検出されることもあるため, 病巣部から菌を証明することが重要であり, 気管支鏡検査は診断に有用であった。治療は長期間必要であるとされており, 白血球減少などの副作用に厳重な注意が必要であった。またヒトのノカルジア症の多くはN.asteroidesによるものであり, 本例のようなN.brasiliensisによるノカルジア症は非常に稀であると考えられた。
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.18.2_146