気道閉塞による非心源性肺水腫をきたした声帯inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)の1例(第25回日本気管支学会総会)
【症例】症例は72歳, 男性. 以前から声帯ポリープと糖尿病を指摘されるも放置していた. 自宅清掃中に突然の強い呼吸困難を自覚し当院に救急搬送された. 来院時両肺の喘鳴を聴取し, 強いチアノーゼのため緊急に経口挿管された. 胸部写真は肺水腫の所見であったが, 心エコー上心機能は保たれていた. 翌日には酸素化の正常化が見られ, 胸部写真所見も改善したため抜管したが, 直後より嗄声, 呼吸困難, 喘鳴が著明になった. 緊急気管支鏡で, 呼吸性に声門を上下し気道を閉塞する3cm大の声帯ポリープを認めた. 気道確保の目的で再挿管を行い, 直後に下部気道を観察したところポリープの一部が挿管チューブにより...
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Published in | 気管支学 Vol. 24; no. 3; p. 218 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
2002
日本気管支学会 |
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Summary: | 【症例】症例は72歳, 男性. 以前から声帯ポリープと糖尿病を指摘されるも放置していた. 自宅清掃中に突然の強い呼吸困難を自覚し当院に救急搬送された. 来院時両肺の喘鳴を聴取し, 強いチアノーゼのため緊急に経口挿管された. 胸部写真は肺水腫の所見であったが, 心エコー上心機能は保たれていた. 翌日には酸素化の正常化が見られ, 胸部写真所見も改善したため抜管したが, 直後より嗄声, 呼吸困難, 喘鳴が著明になった. 緊急気管支鏡で, 呼吸性に声門を上下し気道を閉塞する3cm大の声帯ポリープを認めた. 気道確保の目的で再挿管を行い, 直後に下部気道を観察したところポリープの一部が挿管チューブにより切離され気管支内に脱落していた. 同日気管切開術を施行, 気管支内の腫瘍の回収を行った. また耳鼻科にて残存した腫瘍の切除術が施行された. 術後は経過良好である. 【病理所見】腫瘍は大部分が多形性を示す紡錘形の細胞から構成され細胞分裂像も散在し, 免疫染色でmyofibroblast様の染色性を示した. さらに血管腫様部分や扁平上皮胞巣も存在しIMTと診断された. 【考察】IMTは炎症性偽腫瘍とも呼ばれる良性腫瘍で声帯発生はまれである. 気道閉塞による肺水腫は, 吸気時の胸腔内の強い陰圧が心拍出量の低下と肺うっ血をきたすため起こるもので, 頻度は高くないがその緊急性から他疾患との鑑別が重要である. |
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ISSN: | 0287-2137 2186-0149 |
DOI: | 10.18907/jjsre.24.3_218_2 |