アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の臨床的検討

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (allergic fungal rhinosinusitis; AFRS) は, 吸入した真菌が副鼻腔に定着したのちに非浸潤性に増殖し, 真菌に対するⅠ型・Ⅲ型アレルギー反応や T 細胞応答などにより病態が形成されると考えられている. 今回われわれは, 当院で内視鏡下鼻内副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery; ESS) を施行した834例のうち, AFRS と確定診断した9例に対し, 後方視的観察研究を行った. AFRS の原因真菌の特定には培養検査が必要だが, 過去の報告では真菌が検出されない症例が多いと言われている. しかし当院では...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 122; no. 12; pp. 1528 - 1535
Main Authors 青木, 由香, 浅香, 大也, 両角, 尚子, 横井, 佑一郎, 坂口, 雄介, 穐山, 直太郎, 井上, なつき, 吉川, 衛, 久保田, 俊輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.12.2019
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.122.1528

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Summary:アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (allergic fungal rhinosinusitis; AFRS) は, 吸入した真菌が副鼻腔に定着したのちに非浸潤性に増殖し, 真菌に対するⅠ型・Ⅲ型アレルギー反応や T 細胞応答などにより病態が形成されると考えられている. 今回われわれは, 当院で内視鏡下鼻内副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery; ESS) を施行した834例のうち, AFRS と確定診断した9例に対し, 後方視的観察研究を行った. AFRS の原因真菌の特定には培養検査が必要だが, 過去の報告では真菌が検出されない症例が多いと言われている. しかし当院では, 好酸球性ムチンをポテトデキストロース寒天 (potato dextrose agar; PDA) 培地やサブローデキストロース寒天 (sabouraud dextrose agar; SDA) 斜面培地で培養することで, 9例のうち6例から Schizophyllum commune (S. commune: スエヒロタケ) を検出した. AFRS に対する治療として, ESS による好酸球性ムチンの除去と, 副鼻腔の単洞化を行い, 術後にステロイドの経口投与と, 鼻洗浄および鼻噴霧用ステロイド (intranasal corticosteroid; INCS) による局所の病態の制御を行った. 9例のうち2例で再発を認めたが, 短期間のステロイドの経口投与で改善したため, 再手術は行わなかった. AFRS の予後評価については, 過去の報告と同様, 総 IgE 値や原因真菌の特異的 IgE 値の変動が術後経過に一致した. これまで, S. commune に対する特異的 IgE 値の推移を検討した報告はないが, 病態の評価に有用と考えた. また今回の経験から, S. commune による AFRS は潜在的に数多く存在する可能性が示唆された.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.122.1528