チェンソーを用いる伐倒作業姿勢の違いが体幹筋群の筋活動量に与える影響
目的:チェンソーを扱う多くの林業従事者は,腰痛に悩まされている.先行研究では腰痛の発症と,チェンソーを使用し木を伐り倒す(以下;伐倒)作業姿勢との間に関連性があると報告されている.しかしながら,伐倒作業中の体幹筋群の筋活動量の測定を行った研究は見当たらない.そこで本研究の目的は表面筋電図を用いて,伐倒作業姿勢と体幹伸展筋群の筋活動との関係を明らかとすることとした.方法:対象は非林業従事者10名とした.チェンソーを保持した測定姿勢は,直立位,体幹前屈30°,体幹前屈90°,片膝立ち位の4課題を設定した.左右の腰部傍脊柱起立筋群(LP)および腹直筋(RA)の活動電位を測定した.得られた活動電位を絶...
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Published in | 産業衛生学雑誌 Vol. 57; no. 4; pp. 111 - 116 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本産業衛生学会
2015
日本産業衛生学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1341-0725 1349-533X |
DOI | 10.1539/sangyoeisei.B14016 |
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Summary: | 目的:チェンソーを扱う多くの林業従事者は,腰痛に悩まされている.先行研究では腰痛の発症と,チェンソーを使用し木を伐り倒す(以下;伐倒)作業姿勢との間に関連性があると報告されている.しかしながら,伐倒作業中の体幹筋群の筋活動量の測定を行った研究は見当たらない.そこで本研究の目的は表面筋電図を用いて,伐倒作業姿勢と体幹伸展筋群の筋活動との関係を明らかとすることとした.方法:対象は非林業従事者10名とした.チェンソーを保持した測定姿勢は,直立位,体幹前屈30°,体幹前屈90°,片膝立ち位の4課題を設定した.左右の腰部傍脊柱起立筋群(LP)および腹直筋(RA)の活動電位を測定した.得られた活動電位を絶対値積分で処理し,%MVCとして正規化した.各筋の左右の筋活動量の比較には対応のある t 検定を,姿勢の違いによる筋活動量の比較には一元配置反復測定分散分析を使用した.危険率5%未満を有意とした.結果:片膝立ち位で右側LPの筋活動量は,左側より14.7%高かった(p<0.05).しかし,他の姿勢では有意な差が認められなかった.体幹前屈30°での右側LPの筋活動量は,直立位,片膝立ち位よりそれぞれ,25.6%,14.2%有意に増加していた(p<0.05).左右のLPの筋活動量は,体幹90°で最も高い値を示し,右側LPの筋活動量で片膝立ち位に比べて16.7%有意に増加していた(p<0.05).体幹前屈角度の増加にともない,左側LPの筋活動量も増加する傾向にあったが,4姿勢の間に有意な差は認められなかった.左右のRAの筋活動量は低く,4姿勢で有意な差は認められなかった.結論:本研究では体幹屈曲を屈曲させると,右側LPの筋活動量は,直立位と片膝立ち位と比較すると有意に増加するが,左側では有意な差が認められず,LPの筋活動量は左右非対称に変化するという結果が得られた.本結果より,体幹前屈位での伐倒作業姿勢は,LPに過度な負担を強いる姿勢であることが示唆された. |
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ISSN: | 1341-0725 1349-533X |
DOI: | 10.1539/sangyoeisei.B14016 |