注射剤による血管障害の発現回避に向けた薬理学的検討並びに薬学的介入

「1. はじめに」 薬剤の点滴静注による血管痛や静脈炎などの血管障害は, 薬剤投与中あるいは投与終了後に発現する注射針の穿刺部周囲での発赤, 疼痛, 硬結を症状とする. 重症化すると投与ルートの確保が困難になるだけでなく, 治療奏効例においても薬剤の変更を余儀なくされるなど患者のQOLの低下をもたらす重大な有害反応である. 多くの薬剤で血管障害を起こし得るが, 特に抗がん薬は高頻度で血管障害を引き起こすことが知られている. そのため臨床現場では, 血管障害や血管外漏出の予防を目的の1つとして, 皮下埋め込み型ポートを用いた抗がん薬の点滴静注や持続静注がしばしば行われており, がん看護協会では,...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 135; no. 3; pp. 465 - 472
Main Author 山田, 孝明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.03.2015
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 薬剤の点滴静注による血管痛や静脈炎などの血管障害は, 薬剤投与中あるいは投与終了後に発現する注射針の穿刺部周囲での発赤, 疼痛, 硬結を症状とする. 重症化すると投与ルートの確保が困難になるだけでなく, 治療奏効例においても薬剤の変更を余儀なくされるなど患者のQOLの低下をもたらす重大な有害反応である. 多くの薬剤で血管障害を起こし得るが, 特に抗がん薬は高頻度で血管障害を引き起こすことが知られている. そのため臨床現場では, 血管障害や血管外漏出の予防を目的の1つとして, 皮下埋め込み型ポートを用いた抗がん薬の点滴静注や持続静注がしばしば行われており, がん看護協会では, 壊死性抗がん薬を30分から1時間以上かけて投与する場合は, 中心静脈カテーテルからの投与や皮下埋め込み型ポートを用いた投与を推奨している. しかしながら, それらの投与法では, 感染症や血栓などの重篤な合併症が生じることも報告されていることから, 依然として多くの患者では末梢静脈からの抗がん薬投与が実施されているのが現状である.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.14-00161