弛緩部型および緊張部型真珠腫に対する, 生存分析の手法を用いた中・長期的治療成績の検討

1991年1月から2012年8月までに外耳道後壁削除・再建型鼓室形成術を施行した弛緩部型真珠腫311耳と緊張部型89耳の術後成績を検討した. 観察期間は1年から21年 (平均5年3カ月) であった.  鼓室形成手術後, 真珠腫再発による再手術や, 他の不備に対する修正手術を施行することなく, さらに日本耳科学会ガイドライン (2010) 術後聴力評価における成功基準を維持している症例 (a : 術前骨導を用いた従来基準成功例, b : 術後気導骨導差20dB 以内) を, 無病生存例を念頭に経過良好例と定義し, 術後経過における累積頻度を算出した.  1. 経過良好例の累積頻度は, 弛緩部型は...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 117; no. 12; pp. 1448 - 1456
Main Authors 氷見, 徹夫, 浅野, 勝士, 正木, 智之, 矢島, 諒人, 長島, 勉, 染川, 幸裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.12.2014
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.117.1448

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Summary:1991年1月から2012年8月までに外耳道後壁削除・再建型鼓室形成術を施行した弛緩部型真珠腫311耳と緊張部型89耳の術後成績を検討した. 観察期間は1年から21年 (平均5年3カ月) であった.  鼓室形成手術後, 真珠腫再発による再手術や, 他の不備に対する修正手術を施行することなく, さらに日本耳科学会ガイドライン (2010) 術後聴力評価における成功基準を維持している症例 (a : 術前骨導を用いた従来基準成功例, b : 術後気導骨導差20dB 以内) を, 無病生存例を念頭に経過良好例と定義し, 術後経過における累積頻度を算出した.  1. 経過良好例の累積頻度は, 弛緩部型は術後5年 a : 76.1%, b : 83.9%, 10年 a : 58.9%, b : 73.0%であり, 緊張部型では術後5年 a : 57.7%, b : 63.5%, 10年 a : 42.1%, b : 56.9%であった. 弛緩部型と緊張部型の経過良好例累積頻度に有意差を認めた (p<0.001).  2. 真珠腫再発の累積発生率は, 弛緩部型では術後5年7.6%, 10年15.3%と, 全経過を通じて徐々に上昇を示した. 緊張部型では, 術後5年6カ月の時点で既に15.8%に達したが, 以後の上昇は認めなかった.  以上より, 術後成績評価には, 長期にわたる経過観察が必要と思われた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.117.1448