治療域上限付近のタクロリムス濃度で惹起されたと思われる脳症の一例

「緒言」免疫抑制剤のタクロリムス(FK506)は, 造血幹細胞移植後の移植片対宿主病の予防において用いられる. FK506の副作用には, 腎障害, 肝機能異常, 感染症, 高血圧, 高血糖高尿酸血症などが知られているが, 注意すべき副作用の1つとして可逆性後白質脳症症候群, 高血圧性脳症がある. これらの脳症は, 視覚障害, 痙攣, 頭痛, 意識障害などの神経学的徴候を呈し, 画像上頭部CTで後頭領域, 白質優位の低吸収域があり, 一般に可逆性で減量や中止によって症状は改善すると言われている. 1, 2) FK506は薬物動態の個人差が大きく, 治療域も狭いために, 日常診療において血中濃度モ...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 132; no. 7; pp. 845 - 848
Main Authors 木村, 純夫, 篠原, 尚樹, 大西, 宏明, 山口, 佳津騎, 田井, 達也, 小坂, 信二, 芳地, 一, 立道, 貴清, 福岡, 憲泰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.07.2012
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.132.845

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Summary:「緒言」免疫抑制剤のタクロリムス(FK506)は, 造血幹細胞移植後の移植片対宿主病の予防において用いられる. FK506の副作用には, 腎障害, 肝機能異常, 感染症, 高血圧, 高血糖高尿酸血症などが知られているが, 注意すべき副作用の1つとして可逆性後白質脳症症候群, 高血圧性脳症がある. これらの脳症は, 視覚障害, 痙攣, 頭痛, 意識障害などの神経学的徴候を呈し, 画像上頭部CTで後頭領域, 白質優位の低吸収域があり, 一般に可逆性で減量や中止によって症状は改善すると言われている. 1, 2) FK506は薬物動態の個人差が大きく, 治療域も狭いために, 日常診療において血中濃度モニタリングが実施されているが, 脳症と血中FK506濃度の関連性は十分に解明されていない. 今回, われわれは治療法上限付近の血中FK506濃度により惹起されたと思われる脳症を経験したので報告する. 「症例」症例は26歳, 男性, 体重53.8kg, 2006年に前縦隔未熟奇形種と診断され, ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン併用療法を3コース施行後, 腫瘍摘出術を施行されていた.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.132.845