脂肪細胞におけるインスリン反応性糖輸送担体 (GLUT4) の細胞膜への移送 (translocation) と糖輸送活性に対するAMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK) 活性化の効果

3T3L1脂肪細胞におけるインスリン反応性糖輸送担体 (GLUT4) の移送を可視化するために, そのN端にenhancement green fluorescent protein (eGFP) を融合させ, GLUT4-eGFP融合体 (GLUT4-eGFP) を作製した。そして, 種々の刺激下で, GLUT4-eGFP移送の経時的変化を共焦点レーザー顕微鏡下でリアルタイムに観察した。AMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK) の活性化は4分以内に形質膜への移送を促進し, この時間経過はインスリン刺激の場合とほぼ同様であった。インスリン刺激によるGLUT4移送ならびに糖輸送活性の促進に対...

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Published in杏林医学会雑誌 Vol. 34; no. 3; pp. 139 - 152
Main Author 山口, 真哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 杏林医学会 2003
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Summary:3T3L1脂肪細胞におけるインスリン反応性糖輸送担体 (GLUT4) の移送を可視化するために, そのN端にenhancement green fluorescent protein (eGFP) を融合させ, GLUT4-eGFP融合体 (GLUT4-eGFP) を作製した。そして, 種々の刺激下で, GLUT4-eGFP移送の経時的変化を共焦点レーザー顕微鏡下でリアルタイムに観察した。AMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK) の活性化は4分以内に形質膜への移送を促進し, この時間経過はインスリン刺激の場合とほぼ同様であった。インスリン刺激によるGLUT4移送ならびに糖輸送活性の促進に対して, PI3-キナーゼの特異的阻害剤であるwortmanninは明らかな抑制効果を示したが, AMPKを介した移送には有意な影響を及ぼさなかった。一方, AMPK活性化後の糖輸送活性の促進については, wortmanninあるいはp38MAPキナーゼ (p38MAPK) の特異的な阻害剤であるSB203580により明らかな抑制が認められた。以上の結果より, 脂肪細胞においてAMPKの活性化は, GLUT4の形質膜への移送を促進するが, その細胞内機構にはインスリンによる細胞内情報伝達機構のなかのPI3-キナーゼ活性化の下流にも影響する系が存在するか, あるいはインスリンによる機構ではない別の細胞内情報伝達系の関与があると考えられた。さらにAMPK活性化による糖輸送活性の増加には, GLUT4移送の促進に加えて, p38MAPKの活性化を介してGLUT4の内因性活性を変化させる調節機構も関与している可能性があると考えられた。
ISSN:0368-5829
1349-886X
DOI:10.11434/kyorinmed.34.139