市中病院における新生児聴覚スクリーニングと精密検査の検討
2005年からの9年間に当院で新生児聴覚スクリーニング (NHS) を施行した6,063例を対象に後方視的検討を行った. NHS は自動 ABR で, 精密聴力検査 (精査) は主に ABR で行った. 2013年の NHS 実施率は88.8%で増加傾向であったが, 希望者に有料で行う現行制度下での全例実施は困難であった. 最終 refer 判定は40例 (0.66%) で, 34例に精査を実施し31例に難聴を認めた. 偽陽性は3例で症例全体の0.05%であった. ハイリスク児群 (HR 群) とローリスク児群 (LR 群) を比較すると最終 refer 率, 難聴率は HR 群で有意に高かっ...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 119; no. 3; pp. 187 - 195 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.03.2016
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.119.187 |
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Summary: | 2005年からの9年間に当院で新生児聴覚スクリーニング (NHS) を施行した6,063例を対象に後方視的検討を行った. NHS は自動 ABR で, 精密聴力検査 (精査) は主に ABR で行った. 2013年の NHS 実施率は88.8%で増加傾向であったが, 希望者に有料で行う現行制度下での全例実施は困難であった. 最終 refer 判定は40例 (0.66%) で, 34例に精査を実施し31例に難聴を認めた. 偽陽性は3例で症例全体の0.05%であった. ハイリスク児群 (HR 群) とローリスク児群 (LR 群) を比較すると最終 refer 率, 難聴率は HR 群で有意に高かった. 両側難聴は20例 (0.33%) で両側難聴率は全国データと比較し有意に高かった. 難聴の原因は HR 群では滲出性中耳炎が38.5% (10/26例) で最も多く, LR 群は半数 (4/8例) が感音難聴であった. 両側難聴の20例中7例は経過観察中に聴力が正常化し, いずれも滲出性中耳炎が原因で, 正常化の月齢中央値は18カ月であった. NHS は永続的な難聴の発見を目的としているが, 滲出性中耳炎も検出され中耳病変の正確な評価が重要である. また34例の精査開始日中央値は46日, 補聴器装用10例の装用開始月齢中央値は5.6カ月で, おおむね早期に実施できた. しかしハイリスク児は通院が中断しやすいため, 保護者への十分な説明を行い, 聴覚障害児へのサポート体制を構築していくことが重要である. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.119.187 |