顎関節無菌性膿瘍を先行発症した炎症性腸疾患の1例

炎症性腸疾患は多彩な腸管外症状を生じ得る. われわれは顎関節膿瘍が炎症性腸疾患に先行したまれな症例を経験した. 症例は20歳男性で, 3週間前から左顎関節を含む多発関節痛に加えて左顎関節膿瘍を生じ, 当科へ入院した. 抗菌薬投与にても多発関節痛と発熱が持続し, 貧血や皮疹, 下血も生じた. 下部消化管内視鏡検査で炎症性腸疾患が疑われたが, ステロイド投与で顎関節膿瘍を含む諸症状の速やかな改善を認めたため, 顎関節膿瘍は炎症性腸疾患の腸管外症状であったと考えた. 原因不明の顎関節炎症状を呈する症例では, 鑑別疾患の一つとして炎症性腸疾患を念頭に置く必要があり, 早期診断のためには貧血や消化管症状...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 124; no. 6; pp. 897 - 902
Main Authors 藤川, 直也, 浅古, 有紀子, 山下, 拓, 宮本, 俊輔, 古木, 省吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.06.2021
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.124.897

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Summary:炎症性腸疾患は多彩な腸管外症状を生じ得る. われわれは顎関節膿瘍が炎症性腸疾患に先行したまれな症例を経験した. 症例は20歳男性で, 3週間前から左顎関節を含む多発関節痛に加えて左顎関節膿瘍を生じ, 当科へ入院した. 抗菌薬投与にても多発関節痛と発熱が持続し, 貧血や皮疹, 下血も生じた. 下部消化管内視鏡検査で炎症性腸疾患が疑われたが, ステロイド投与で顎関節膿瘍を含む諸症状の速やかな改善を認めたため, 顎関節膿瘍は炎症性腸疾患の腸管外症状であったと考えた. 原因不明の顎関節炎症状を呈する症例では, 鑑別疾患の一つとして炎症性腸疾患を念頭に置く必要があり, 早期診断のためには貧血や消化管症状を見落とさないことが肝要である.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.124.897