アデノイド・口蓋扁桃の周術期に呼吸合併症を生じた小児睡眠時呼吸障害例の検討

本研究の目的は, 睡眠時呼吸障害を有する小児症例におけるアデノイド・扁桃手術 (AT) 後の呼吸合併症のリスク因子を同定することである. 睡眠時呼吸障害の初回治療としてATを施行された小児症例186例 (男児131例, 女児55例) 中, 周術期において換気不全が生じ, cyanosisを呈して血中酸素飽和度が90%未満となり, かつ迅速挿管, continuous positive airway pressure あるいはエアウェイ挿入などの医学的介入を要する呼吸合併症を生じた症例は14例 (男児9例, 女児5例) であった. うち9例が3歳未満であり, 8例に筋緊張低下が, 7例に-1.5...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 117; no. 3; pp. 196 - 205
Main Authors 小川, 真, 細川, 清人, 猪原, 秀典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.03.2014
日本耳鼻咽喉科学会
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Summary:本研究の目的は, 睡眠時呼吸障害を有する小児症例におけるアデノイド・扁桃手術 (AT) 後の呼吸合併症のリスク因子を同定することである. 睡眠時呼吸障害の初回治療としてATを施行された小児症例186例 (男児131例, 女児55例) 中, 周術期において換気不全が生じ, cyanosisを呈して血中酸素飽和度が90%未満となり, かつ迅速挿管, continuous positive airway pressure あるいはエアウェイ挿入などの医学的介入を要する呼吸合併症を生じた症例は14例 (男児9例, 女児5例) であった. うち9例が3歳未満であり, 8例に筋緊張低下が, 7例に-1.5SD以上の低身長が認められた. 統計学的解析により, 3歳未満の年齢, 筋緊張低下あるいは低身長症を有する症例で呼吸合併症の発生率が有意に高く, さらに, 低体重, 術前 apnea-hypopnea index 高値がリスク因子であることが示唆された. 一方, これらの14例の個々を検討すると, 3歳未満の症例は, 筋緊張低下あるいは低身長のいずれかを有していた. また14例中13例において, 呼吸合併症が全身麻酔に関連して発生しており, 10例が集中管理を必要とした. 以上の結果から, 小児睡眠時呼吸障害症例のAT施行に関して, 筋緊張低下あるいは低身長を伴う3歳未満症例は, 呼吸合併症の発生リスクが高いため, ICUを有する施設において施行されることが推奨される.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.117.196