耳下腺腫瘍に対する被膜外摘出術―葉部分切除術との比較
良性耳下腺腫瘍に対する手術術式や切除範囲はいまだ議論がある. 20世紀始めには核出術が標準術式であったが, 多形腺腫に対する再発率が45%にも達することから, 1940年代になって耳下腺全摘出術や耳下腺浅葉摘出術といったより根治的な術式が提唱された. その後, それらの術式が術後顔面神経麻痺や Frey 症候群の頻度が高いことが分かり, 顔面神経剖出範囲が狭く, 正常耳下腺組織を一部温存する葉部分切除術 (PSP) が提案された. 1990年代になって, さらに縮小手術であるいわゆる被膜外摘出術 (ECD) が提唱された. ECD は顔面神経を剖出させることなく, 腫瘍被膜外の正常耳下腺を薄く...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 124; no. 3; pp. 205 - 210 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.03.2021
日本耳鼻咽喉科学会 |
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Summary: | 良性耳下腺腫瘍に対する手術術式や切除範囲はいまだ議論がある. 20世紀始めには核出術が標準術式であったが, 多形腺腫に対する再発率が45%にも達することから, 1940年代になって耳下腺全摘出術や耳下腺浅葉摘出術といったより根治的な術式が提唱された. その後, それらの術式が術後顔面神経麻痺や Frey 症候群の頻度が高いことが分かり, 顔面神経剖出範囲が狭く, 正常耳下腺組織を一部温存する葉部分切除術 (PSP) が提案された. 1990年代になって, さらに縮小手術であるいわゆる被膜外摘出術 (ECD) が提唱された. ECD は顔面神経を剖出させることなく, 腫瘍被膜外の正常耳下腺を薄く付けた形で切除する術式である. 当科では2015年6月~2020年5月の間に, 405例の良性耳下腺腫瘍に対する手術を施行した. そのうち, 浅葉腫瘍に対して, 13例に ECD, 148例に PSP を施行した. ECD の適応は 25mm 以下, 浅葉, および可動性のある腫瘍とした. 切除には電気メスを活用し, 術中神経刺激装置も用いた. 術後一時的顔面神経麻痺の頻度は PSP では10.1%であったのに対して ECD では0%であった. 平均手術時間では ECD は PSP に比べて有意に短かった. 今回の結果から ECD が PSP と比較して十分に優れている術式であると結論づけることはできないが, 適切な症例を選べば ECD は耳下腺腫瘍に対する術式の選択肢になると考えられた. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.124.205 |