胃切除における溝型低圧吸引ドレーンの適正使用

【背景】当科では胃癌,リンパ節郭清術において,術後合併症の低減を目的に 2011年 7月より溝型ドレーンによる膵周囲郭清範囲の低圧吸引ドレナージを施行している。【対象および方法】術後腹腔内合併症に対するドレーンの予防・治療効果について,変更前の半閉鎖式ドレーン群(n=1,399)と溝型低圧吸引ドレーン群(n=1,071)で比較検討を行った。また,溝型低圧吸引ドレーンの術後 3病日のドレーンアミラーゼ値(D-AMY)を 173例で測定し,診断効果を検討した。【結果】術後縫合不全や術後出血の頻度はドレーン変更前後に差はなかったが,術後膵液瘻,膵周囲炎(Clavien-Dindo分類(CD)Grad...

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Published in日本外科感染症学会雑誌 Vol. 15; no. 2; pp. 137 - 142
Main Authors 松木, 淳, 藪崎, 裕, 會澤, 雅樹, 番場, 竹生, 野上, 仁, 丸山, 聡, 野村, 達也, 中川, 悟, 瀧井, 康公, 土屋, 嘉昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本外科感染症学会 30.04.2018
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Summary:【背景】当科では胃癌,リンパ節郭清術において,術後合併症の低減を目的に 2011年 7月より溝型ドレーンによる膵周囲郭清範囲の低圧吸引ドレナージを施行している。【対象および方法】術後腹腔内合併症に対するドレーンの予防・治療効果について,変更前の半閉鎖式ドレーン群(n=1,399)と溝型低圧吸引ドレーン群(n=1,071)で比較検討を行った。また,溝型低圧吸引ドレーンの術後 3病日のドレーンアミラーゼ値(D-AMY)を 173例で測定し,診断効果を検討した。【結果】術後縫合不全や術後出血の頻度はドレーン変更前後に差はなかったが,術後膵液瘻,膵周囲炎(Clavien-Dindo分類(CD)Grade Ⅲ以上)の頻度は7.1%から2.0%へ減少していた。多変量解析で膵液瘻の危険因子を解析すると,半閉鎖式ドレーン群では,男性,肥満,胃全摘,脾摘,術中出血量,溝型低圧吸引ドレーン群では術中出血量,腹腔鏡手術に相関を認めた。溝型低圧吸引ドレーンの術後 3病日の D-AMYは,中央値 176IU/L(21~ 40,962)で, D-AMY 375IU/L(CD Grade Ⅰ)以上は26.6%,D-AMYと術後膵液瘻(CD Grade Ⅲ)に相関を認めた。【結語】胃癌手術における膵周囲郭清範囲の低圧吸引ドレナージは術後膵液瘻,膵周囲炎の予防に貢献している可能性がある。術中出血が多い場合はとくに注意してドレナージを行うべきである。また D-AMYは膵液瘻の予測因子となるのでドレーン抜去時に参考となる。
ISSN:1349-5755
2434-0103
DOI:10.24679/gekakansen.15.2_137