正常眼圧緑内障の経過中に抗AQP4抗体陽性視神経炎を発症した一例

56歳女性.19年前より両眼の正常眼圧緑内障の診断で前医にて抗緑内障点眼治療を受けていたが,4日前から左眼の眼球運動痛と急激な視野狭窄を自覚し,北海道大学病院を紹介された.視力は右(1.2),左(0.8),眼圧は両眼9 mmHg.右眼の視野検査では緑内障様の鼻側上方の沈下,左眼では高度な周辺部視野欠損と傍中心暗点が認められた.光干渉断層計の網膜内層解析では左眼後極に広範囲の菲薄化と右眼に弓状の菲薄化がみられた.造影MRIで左視神経の増強効果を認め,さらに抗アクアポリン(AQP)4抗体が陽性であったことから抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した.ステロイドパルス治療2クールと免疫グロブリン大量静注...

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Published in神経眼科 Vol. 40; no. 4; pp. 364 - 370
Main Authors 林, 一彦, 新海, 晃弘, 廣岡, 季里子, 桂野, 水那, 石田, 晋, 中村, 佳代子, 新明, 康弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経眼科学会 25.12.2023
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ISSN0289-7024
2188-2002
DOI10.11476/shinkeiganka.40.364

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Summary:56歳女性.19年前より両眼の正常眼圧緑内障の診断で前医にて抗緑内障点眼治療を受けていたが,4日前から左眼の眼球運動痛と急激な視野狭窄を自覚し,北海道大学病院を紹介された.視力は右(1.2),左(0.8),眼圧は両眼9 mmHg.右眼の視野検査では緑内障様の鼻側上方の沈下,左眼では高度な周辺部視野欠損と傍中心暗点が認められた.光干渉断層計の網膜内層解析では左眼後極に広範囲の菲薄化と右眼に弓状の菲薄化がみられた.造影MRIで左視神経の増強効果を認め,さらに抗アクアポリン(AQP)4抗体が陽性であったことから抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した.ステロイドパルス治療2クールと免疫グロブリン大量静注療法を施行し,左眼の周辺部視野欠損は改善した.緑内障と思われる経過中でも,眼圧上昇に急激に視野狭窄が悪化した場合,視神経炎の合併を念頭におき,抗AQP4抗体の測定を行うべきである.
ISSN:0289-7024
2188-2002
DOI:10.11476/shinkeiganka.40.364