ヘパリン不純物のNMR分析法

ヘパリンはグリコサミノグリカン重合によって形成された多糖であり, 血液透析時の血液凝固の防止や血栓塞栓症の治療等, 種々のケースにて抗凝血剤として使用されている. しかしながら, 今年初め, 米国にて, ヘパリンを静脈内注射数分後に血管性浮腫や血圧低下, 若しくはそれらに関連したアナフィラキシー様症状が現れ, 患者が死亡する事例が報告された. これらはヘパリンに混入した不純物が原因とされ, 過硫酸化されたコンドロイチン硫酸が原因物質と考えられている.1) 日本においても, 2008年3月よりヘパリン製剤の一部回収が行われるなど大きな社会問題となっている. 早期に問題の沈静化を図るために, 過硫...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 128; no. 10; pp. 1513 - 1515
Main Authors 山口, 秀幸, 品川, 麻衣, 宮野, 博, 鈴木, 榮一郎, 榛葉, 信久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.10.2008
日本薬学会
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ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.128.1513

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Summary:ヘパリンはグリコサミノグリカン重合によって形成された多糖であり, 血液透析時の血液凝固の防止や血栓塞栓症の治療等, 種々のケースにて抗凝血剤として使用されている. しかしながら, 今年初め, 米国にて, ヘパリンを静脈内注射数分後に血管性浮腫や血圧低下, 若しくはそれらに関連したアナフィラキシー様症状が現れ, 患者が死亡する事例が報告された. これらはヘパリンに混入した不純物が原因とされ, 過硫酸化されたコンドロイチン硫酸が原因物質と考えられている.1) 日本においても, 2008年3月よりヘパリン製剤の一部回収が行われるなど大きな社会問題となっている. 早期に問題の沈静化を図るために, 過硫酸化されたコンドロイチン硫酸の検出にはNMR法が提唱された.2) 簡便な方法であり, 当面は, 過硫酸化されたコンドロイチン硫酸の検出に適していると考えられている. ヘパリンのアセチル基のプロトンシグナルが2.04ppmに観測される一方, 過硫酸化されたコンドロイチン硫酸のアセチル基のプロトンシグナルは2.15ppmであり, この化学シフト差を使って過硫酸化されたコンドロイチン硫酸の存在を確認することができる.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.128.1513