線維筋痛症

• Published in: THE SHINSHU MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 2; p. 66
• Main Author: 松田, 正之
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 信州医学会 2007; The Shinshu Medical Society
• ISSN: 0037-3826; 1884-6580
• DOI: 10.11441/shinshumedj.55.66

全身に強い痛みがあるのにもかかわらず,炎症反応やリウマチ因子は全て陰性で,いくら調べても器質的異常がみつからない……そんな患者さんに遭遇した経験はありませんか.痛みに加えて睡眠障害や易疲労感といった症状が見られる時には,一度「線維筋痛症」という病気の可能性を検討してみてください.世界中のどこでも見られる病気で,米国での有病率は女性で3.4%,男性で0.5%とされています.本邦では「うつ病」などの精神疾患と混同されている場合が多く,意外とまだ知られていません.正確な病因はまだ不明ですが,セロトニンなどの代謝異常や免疫異常の関与が考えられています1).この病気の診断にはアメリカリウマチ協会から提唱されている分類基準がよく用いられています2).後頭部・下部頚椎・僧帽筋・棘上筋など,左右対称に全身の決められた18ヵ所を親指の腹で約4kg/cm2の強さで押していき(強すぎれば誰でも痛い),圧痛があるかどうか調べます.11ヵ所以上で圧痛が認められれば線維筋痛症と診断されます.特別な臨床検査はありません.治療には非ステロイド性鎮痛薬,三環系抗うつ薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬,ノイロトロピンといった薬剤が用いられています3).ステロイド薬は無効です.関節変形や肢体不自由をもたらす病気ではないことを最初に患者さんによくお話をし,不安を取り除いてあげることも,治療を円滑に進める上で非常に重要です.文献 1)西海正彦：Fibromyalgiaとchronic fatigue syndrome(CFS)について.リウマチ科21：53-61,1999 2) Wolfe F, Smythe HA, Yunus MB, Bennett RM, Bombardier C, Goldenberg DL, Tugwell P, Campbell SM, Abeles M, Clark P, et al.： The American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of fibromyalgia. Report of the multicenter criteria committee. Arthritis Rheum 33： 160-172, 1990 3)西海正彦：線維筋痛症.日内会誌88：51-56,1999