銅化合物による心血管障害及び糖尿病治療への実験的試み

「1. はじめに」1892年, スイスの化学者ウェルナー(Werner 1866-1919)は, コバルト原子を含む無機化合物はコバルト原子が中心的位置を占め, その周りをアンモニア分子や塩素イオンが全体的に取り巻く立体的構造をしていると考え, 配位説(coordination theory)を提案した. この配位説により, 金属原子と有機化合物やイオンなどの配位子を含む錯体の立体構造を一般的に解析できるようになった. その後, 配位説はヘモグロビンやクロロフィルなど金属を含む生体分子の構造と機能を明らかにする上で, 極めて重要な考え方となった. 1-3) 一方, 1910年に, ドイツの細菌...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 132; no. 3; pp. 285 - 291
Main Author 桜井, 弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.03.2012
日本薬学会
Online AccessGet full text
ISSN0031-6903
1347-5231
DOI10.1248/yakushi.132.285

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」1892年, スイスの化学者ウェルナー(Werner 1866-1919)は, コバルト原子を含む無機化合物はコバルト原子が中心的位置を占め, その周りをアンモニア分子や塩素イオンが全体的に取り巻く立体的構造をしていると考え, 配位説(coordination theory)を提案した. この配位説により, 金属原子と有機化合物やイオンなどの配位子を含む錯体の立体構造を一般的に解析できるようになった. その後, 配位説はヘモグロビンやクロロフィルなど金属を含む生体分子の構造と機能を明らかにする上で, 極めて重要な考え方となった. 1-3) 一方, 1910年に, ドイツの細菌学者・化学者のエールリヒ(Ehrlich 1854-1915)は, 当時流行していた梅毒の特効薬サルバルサンを合成し, 本化合物により疾患が治療できることを見い出し, 化学療法(chemotherapy)を提案した.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.132.285