前方型披裂軟骨脱臼症に対する局所麻酔ファイバースコープ下整復術

気管挿管の合併症や喉頭外傷の一つとして披裂軟骨脱臼がある. これらは自然回復例もあるが, 全身麻酔やNLA麻酔のもとに直達喉頭鏡を挿入しての整復術の報告が多く, また喉頭形成術など観血的手術が必要となった症例も報告されている. 今回我々は8例の披裂軟骨脱臼症例を経験し, 自然回復例を除く5例に対して局所麻酔下の整復術を外来手術として施行し良好な結果を得た. 症例は53~75歳の男性2例, 女性3例である. すべて前方型脱臼で4例が気管挿管後, 1例がラリンゲアルマスク使用例であった. 整復術は, 両鼻腔および喉頭に4%キシロカイン®で表面麻酔を行った後, 一側鼻腔よりファイバースコープを他側鼻...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 110; no. 1; pp. 13 - 19
Main Authors 阿部, 弘一, 牧野, 伸子, 市村, 恵一, 西野, 宏, 石川, 和宏, 石川, 浩太郎, 今井, 恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 01.01.2007
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.110.13

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Summary:気管挿管の合併症や喉頭外傷の一つとして披裂軟骨脱臼がある. これらは自然回復例もあるが, 全身麻酔やNLA麻酔のもとに直達喉頭鏡を挿入しての整復術の報告が多く, また喉頭形成術など観血的手術が必要となった症例も報告されている. 今回我々は8例の披裂軟骨脱臼症例を経験し, 自然回復例を除く5例に対して局所麻酔下の整復術を外来手術として施行し良好な結果を得た. 症例は53~75歳の男性2例, 女性3例である. すべて前方型脱臼で4例が気管挿管後, 1例がラリンゲアルマスク使用例であった. 整復術は, 両鼻腔および喉頭に4%キシロカイン®で表面麻酔を行った後, 一側鼻腔よりファイバースコープを他側鼻腔より尿道バルーンカテーテルを挿入して行った. 喉頭を観察しながら, バルーンを拡張させ披裂部の高さで数秒間留置する操作 (留置法) とバルーンを声門部で拡張させ引き抜く操作 (引き抜き法) を行った. これらを数回繰り返して1回の整復術とした. 3例は1回目の整復術後1~2週で改善したが, 2例は改善が不十分であり2回目を追加した. この2例も2回目の整復術後1~2週で声帯運動, 嗄声ともに改善した. なお, 5症例に対し計7回の整復術を施行したが全例で合併症は認められなかった. 本法は外来で施行が可能であり, 簡便で侵襲も少なく成績も良好であるため, 前方型披裂軟骨脱臼症に対する治療法として有用と考えられた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.110.13