骨格性下顎前突者の外科的矯正治療前後の咀嚼運動の変化
著しい顎の変形を伴う骨格性下顎前突者が有する形態的,審美的障害は矯正治療だけでは改善が困難なことが多いため,近年,外科的矯正治療が多く行われている.本研究では,外科的矯正治療が必要と診断された骨格性下顎前突症者の顎顔面形態の特徴が顎運動にどの様な影響を及ぼしているのか,外科的矯正治療による歯列咬合,および顎顔面形態の変化が咀嚼運動機能へどのような影響を及ぼしているか検討した.被験者は,本大学附属病院で顎変形症(骨格性下顎前突症)と診断され外科的矯正治療を受けた16名(顎変形群)と本大学の学生,職員において正常咬合を有するもの21名(正常群)とした.顎変形群では初診時を治療前とし,動的治療終了1...
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Published in | 九州歯科学会雑誌 Vol. 60; no. 6; pp. 179 - 190 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州歯科学会
01.01.2007
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0368-6833 1880-8719 |
DOI | 10.2504/kds.60.179 |
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Summary: | 著しい顎の変形を伴う骨格性下顎前突者が有する形態的,審美的障害は矯正治療だけでは改善が困難なことが多いため,近年,外科的矯正治療が多く行われている.本研究では,外科的矯正治療が必要と診断された骨格性下顎前突症者の顎顔面形態の特徴が顎運動にどの様な影響を及ぼしているのか,外科的矯正治療による歯列咬合,および顎顔面形態の変化が咀嚼運動機能へどのような影響を及ぼしているか検討した.被験者は,本大学附属病院で顎変形症(骨格性下顎前突症)と診断され外科的矯正治療を受けた16名(顎変形群)と本大学の学生,職員において正常咬合を有するもの21名(正常群)とした.顎変形群では初診時を治療前とし,動的治療終了1〜6ヵ月後を治療後とした.顎顔面形態は側面頭部X線規格写真によって分析し,ガム咀嚼時の顎運動は,顎機能統合検査装置(ナソヘキサグラフシステムJM-1000,小野測器)を用いて切歯点(下顎両側中切歯間)の顎運動軌跡として記録分析し,以下の所見を得た.1.骨格性下顎前突者の咀嚼時間が長く,治療後には正常咬合者の咀嚼時間に近づいた.2.骨格性下顎前者の咀嚼リズムは不安定であったが,治療後は咀嚼リズムの安定性が高まり正常咬合者との差を認めなかった.3.骨格性下顎前突者の開口量は大きく,治療後は減少した.4.顎変形群の咀嚼運動速度は正常咬合者と比べて差はなく,治療前後にも差がなかった.以上のことから,骨格性下顎前突の顎顔面形態に起因する咀嚼リズムの障害は,外科的矯正治療後には改善され,治療後の顎顔面形態と同様に正常咬合者に近づくことから,外科的矯正治療の意義が示された. |
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ISSN: | 0368-6833 1880-8719 |
DOI: | 10.2504/kds.60.179 |