荷電粒子の微小管上の1次元ブラウン運動―非特異的で緩やかな分子間相互作用のモデル

「1. 微小管の長軸に沿った1次元ブラウン運動」 タンパク質間の相互作用は, しばしば「鍵と鍵穴」に例えられ, その結合は一般に特異的かつ強固なものと考えられている. しかし近年, モーター分子をはじめとする様々な細胞骨格関連タンパクが, アクチンや微小管などのフィラメント上で1次元(1D)ブラウン運動を示す例が次々と報告され(図1a)1), 2), その分子間相互作用は「鍵と鍵穴」とはかなり様相が異なることが明らかになりつつある. 1Dブラウン運動においては, 静電相互作用が重要な役割を果たしていると考えられている. その根拠としては, (1)溶液の塩濃度を上げていくと運動持続時間が短縮する...

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Published in生物物理 Vol. 52; no. 1; pp. 010 - 013
Main Authors 箕浦, 逸史, 武藤, 悦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2012
日本生物物理学会
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Summary:「1. 微小管の長軸に沿った1次元ブラウン運動」 タンパク質間の相互作用は, しばしば「鍵と鍵穴」に例えられ, その結合は一般に特異的かつ強固なものと考えられている. しかし近年, モーター分子をはじめとする様々な細胞骨格関連タンパクが, アクチンや微小管などのフィラメント上で1次元(1D)ブラウン運動を示す例が次々と報告され(図1a)1), 2), その分子間相互作用は「鍵と鍵穴」とはかなり様相が異なることが明らかになりつつある. 1Dブラウン運動においては, 静電相互作用が重要な役割を果たしていると考えられている. その根拠としては, (1)溶液の塩濃度を上げていくと運動持続時間が短縮すること, (2)微小管上のブラウン運動の場合に, チューブリン分子のC末端に集中する負荷電アミノ酸や微小管結合タンパクの正荷電アミノ酸を人為的に削ると, 1Dブラウン運動が不安定化することがあげられる. 微小管上でタンパク分子が, 静電相互作用を基盤として1Dブラウン運動を行う仕組みとして, 2つの異なる考え方が可能である3)-5).
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.52.010