脂質膜と金属イオンによるアミロイドβペプチドのコンホメーション制御

『1. はじめに』 アルツハイマー病患者の脳にみられる病理学的特徴であるアミロイド斑は, 約40アミノ酸残基からなるペプチドであるアミロイドβ(Aβ)が分子間会合して生じた線維状凝集体(アミロイド線維)を主な成分とする1). 非会合状態のAβモノマーは無害であるが, 線維化したAβは培養細胞に対して毒性を示す2). 構造生物学的な観点からは, アルツハイマー病はタンパク質のコンホメーション変化を契機として引き起こされる「コンホメーション病」と総称される病気の1つとして捉えられる. すなわち, Aβモノマーの水溶液中における構造は不規則であるが, 分子間会合して線維となるためには, Aβはβシー...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 130; no. 4; pp. 495 - 501
Main Authors 三浦, 隆史, 依田, 真由美, 堤, 千裕, 村山, 紀代子, 竹内, 英夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.04.2010
日本薬学会
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Summary:『1. はじめに』 アルツハイマー病患者の脳にみられる病理学的特徴であるアミロイド斑は, 約40アミノ酸残基からなるペプチドであるアミロイドβ(Aβ)が分子間会合して生じた線維状凝集体(アミロイド線維)を主な成分とする1). 非会合状態のAβモノマーは無害であるが, 線維化したAβは培養細胞に対して毒性を示す2). 構造生物学的な観点からは, アルツハイマー病はタンパク質のコンホメーション変化を契機として引き起こされる「コンホメーション病」と総称される病気の1つとして捉えられる. すなわち, Aβモノマーの水溶液中における構造は不規則であるが, 分子間会合して線維となるためには, Aβはβシート構造を形成する必要がある3). このため, Aβのコンホメーション変化の原因とメカニズムを理解することは, アルツハイマー病の予防法又は根本的な治療法を開発する上で重要である. Aβ凝集の原因となる可能性が指摘されている生体成分として, 脂質膜と金属イオンがあるが, われわれは, それらがAβのコンホメーションに対してどのような影響を与えるかを, 主として分光学的手法を用いて調べてきた. 本稿では, これらの研究の一端を紹介する.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.130.495