突発性難聴に対する鼓室内注入併用全身ステロイド療法

近年, 突発性難聴に対しての鼓室内注入療法が注目されている. 静岡赤十字病院では2016年7月からは入院患者の約8割が突発性難聴の初期治療として鼓室内注入併用全身ステロイド療法 (combined therapy: CT) を選択しており, それ以前に行っていたステロイド全身投与 (systemic steroid therapy: SST) 症例を対照群として CT の有用性について検討を行った. CT 群は31例, SST 群は48例が対象となった. 両群の背景に有意な違いは認めなかった. 著明回復以上の割合は CT 群77%に対し SST 群52%で CT 群の方が有意に高かった (OR...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 124; no. 1; pp. 35 - 42
Main Authors 平賀, 良彦, 和佐野, 浩一郎, 川﨑, 泰士, 都築, 伸佳, 佐原, 聡甫, 橋本, 陽介, 小川, 郁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.01.2021
日本耳鼻咽喉科学会
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Summary:近年, 突発性難聴に対しての鼓室内注入療法が注目されている. 静岡赤十字病院では2016年7月からは入院患者の約8割が突発性難聴の初期治療として鼓室内注入併用全身ステロイド療法 (combined therapy: CT) を選択しており, それ以前に行っていたステロイド全身投与 (systemic steroid therapy: SST) 症例を対照群として CT の有用性について検討を行った. CT 群は31例, SST 群は48例が対象となった. 両群の背景に有意な違いは認めなかった. 著明回復以上の割合は CT 群77%に対し SST 群52%で CT 群の方が有意に高かった (OR3.15 (95%信頼区間1.14~8.70)) (p=0.024). 著明回復以上の有無を目的変数として, 単変量解析で p<0.10 であった CT, 年齢, 性別を説明変数としてロジスティック回帰分析を行うと, CT のみが有意な因子であった (p=0.044). 治療前後での聴力改善度はそれぞれ5周波数平均では CT 群 27.7dB, SST 群 18.3dB で有意差を認めた (p=0.017). 各周波数ごとでは 250Hz, 500Hz, 4,000Hz において有意に CT 群の改善度が大きかった (p=0.028, p=0.010, p=0.033). CT 群で投与4カ月後の遅発性の鼓膜穿孔を1例 (3%) で認めたが, そのほかの合併症は認めなかった.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.124.35