mRNA絶対定量法によって明らかにされた長期記憶時の転写調節因子CREBの増減

「1.はじめに」 動物は経験によって「学習」し, 行動を変化させる. また, 学習を「記憶」として保持することで行動変化を持続させることができる. たとえば, 何を食べれば栄養が豊富であり, 毒物を食べないですむか? どうすれば配偶者とめぐり会えるか? そしてどうやって子育てをすれば安全なのか? など, 経験に基づく学習と記憶は, 個体の生存と種の保存のためのストラテジーとして使われる. 一般的に, 学習や記憶は「生得的」な能力と「習得的」な経験との相互作用によって形成されると考えられている. 記憶の分類としてはSquireによる分類がよく知られている. 簡単に説明すると, 記憶の保持時間によ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in生物物理 Vol. 51; no. 1; pp. 018 - 021
Main Authors 伊藤, 悦朗, 定本, 久世
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2011
日本生物物理学会
Online AccessGet full text
ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.51.018

Cover

More Information
Summary:「1.はじめに」 動物は経験によって「学習」し, 行動を変化させる. また, 学習を「記憶」として保持することで行動変化を持続させることができる. たとえば, 何を食べれば栄養が豊富であり, 毒物を食べないですむか? どうすれば配偶者とめぐり会えるか? そしてどうやって子育てをすれば安全なのか? など, 経験に基づく学習と記憶は, 個体の生存と種の保存のためのストラテジーとして使われる. 一般的に, 学習や記憶は「生得的」な能力と「習得的」な経験との相互作用によって形成されると考えられている. 記憶の分類としてはSquireによる分類がよく知られている. 簡単に説明すると, 記憶の保持時間によって短期記憶と長期記憶におおまかに分けられる. たとえば「短期記憶」は数分から数時間続く記憶であり, 生物学的な性質としてはニューロン(神経細胞)のイオンチャネルがリン酸化されてコンダクタンスが変化するなど, 一過的に分子や細胞膜が生化学的・生理学的な変化をするだけにとどまる.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.51.018