阻害剤開発のための2種のプロスタグランジン合成酵素の構造と機能

「1. はじめに」プロスタグランジン(PG)は生体内で局所ホルモンとして産生され, さまざまな生理機能の調節に関与している. 中でもPGD2は, 脳などの中枢神経系では睡眠誘発物質として1), 末梢組織ではアレルギーの媒介物質として機能する2),3). 一方, PGF2αは, 子宮平滑筋の収縮作用を有し4), 陣痛促進剤として広く臨床応用されている. これらPG類は, 細胞膜からホスホリパーゼA2の働きで作られたアラキドン酸が, シクロオキシゲナーゼ(COX)によりPGH2へと変換されたのち, それぞれ特異的酵素によって生合成される(Fig.1). リポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)は...

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Published in生物物理 Vol. 47; no. 1; pp. 036 - 043
Main Authors 井上, 豪, 裏出, 良博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2007
日本生物物理学会
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Summary:「1. はじめに」プロスタグランジン(PG)は生体内で局所ホルモンとして産生され, さまざまな生理機能の調節に関与している. 中でもPGD2は, 脳などの中枢神経系では睡眠誘発物質として1), 末梢組織ではアレルギーの媒介物質として機能する2),3). 一方, PGF2αは, 子宮平滑筋の収縮作用を有し4), 陣痛促進剤として広く臨床応用されている. これらPG類は, 細胞膜からホスホリパーゼA2の働きで作られたアラキドン酸が, シクロオキシゲナーゼ(COX)によりPGH2へと変換されたのち, それぞれ特異的酵素によって生合成される(Fig.1). リポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)は, 脳のクモ膜に局在し, 睡眠誘発物質としてのPGD2を生合成し, 造血器型PGD合成酵素(H-PGDS)は, おもに肥満細胞やTh2細胞に存在し, アレルギー伝達物質としてのPGD2を産生する. 一方, PGF2αを産生する酵素は2種類存在し, PGH2以外にPGD2やPGE2も基質とするPGF合成酵素(PGFS)と, PGH2のみを特異的に認識するPGFSがある.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.47.036