大腸悪性狭窄に対する経肛門的イレウス管と自己拡張型金属ステントの安全性,有用性についての比較検討
背景:本邦では大腸悪性狭窄に対する緊急手術を回避するための代替減圧術(alternative colonic decompression: ACD)として,経肛門的イレウス管(transanal drainage tube: TDT)が一般的であった。2012年から自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent: SEMS)が使用可能となり,使用機会が増加しているが両者を比較した検討は少ない。 目的:TDTとSEMSの使用成績を比較し,その有用性と安全性を明らかにすること。 対象と方法:2006年1月から2016年9月までの間,当院にて大腸悪性狭窄に対して...
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Published in | 聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 45; no. 2; pp. 95 - 104 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
2017
聖マリアンナ医科大学医学会 St. Marianna University Society of Medical Science |
Subjects | |
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ISSN | 0387-2289 2189-0285 |
DOI | 10.14963/stmari.45.95 |
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Summary: | 背景:本邦では大腸悪性狭窄に対する緊急手術を回避するための代替減圧術(alternative colonic decompression: ACD)として,経肛門的イレウス管(transanal drainage tube: TDT)が一般的であった。2012年から自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent: SEMS)が使用可能となり,使用機会が増加しているが両者を比較した検討は少ない。 目的:TDTとSEMSの使用成績を比較し,その有用性と安全性を明らかにすること。 対象と方法:2006年1月から2016年9月までの間,当院にて大腸悪性狭窄に対して行われたACD62件(TDT, n=37; SEMS, n=25)を対象とし,retrospectiveに両者の使用成績を比較検討した。主要評価項目は臨床的成功率,副次評価項目は技術的成功率とした。処置目的はBridge to surgery(BTS)と緩和(Palliative: PAL)に大別した。観察期間はACDが行われた入院期間中とした。 結果:TDTとSEMSの技術的成功率(TDT: 86.5%,SEMS: 96.0%),臨床的成功率(TDT: 86.0%,SEMS: 96.2%)に有意差は認めなかった。SEMS群では全例が食事摂取を再開できており,the colorectal obstruction scoring system (CROSS)は処置前平均0.5から処置後平均3.9まで改善していた。BTS目的では,SEMS群で77.8%が一時退院可能であった(P < 0.001)。また手術までの期間はSEMS群が有意に長いのに対し入院期間に有意差はなく,SEMS群は術後早期に退院できている可能性が示唆された。偶発症発生率に有意差は認めなかったが,穿孔はTDT群のみで認められた。 結語:SEMSはTDTと同等の安全性と有用性を示し,処置後は経口摂取再開,一時退院が可能であった。SEMSの短期成績は良好であり,大腸悪性狭窄に対する減圧術の第一選択となり得ることが示唆された。 |
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ISSN: | 0387-2289 2189-0285 |
DOI: | 10.14963/stmari.45.95 |