インフルエンザウイルスの運動とその制御

「1. はじめに」インフルエンザウイルスは, RNAを遺伝子とする直径100nmほどのエンベロープウイルスである. ウイルスは, エンドサイトーシスを利用して細胞内に侵入し, エンベロープとエンドソーム膜の融合によりウイルス粒子内部のRNAが細胞質に移行することで感染が成立する. ところで感染の場となる上気道では, 組織表面の大部分は繊毛に覆われており, 繊毛表面ではエンドサイトーシスは起きない. そこで, ウイルスは繊毛の基部やその付近の非繊毛細胞(分泌細胞や免疫系の細胞)といった比較的エンドサイトーシスをよく行う領域(標的部位)へ到達しなければならない. 一般にウイルスは, 細菌や真核生物...

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Published in生物物理 Vol. 59; no. 6; pp. 324 - 326
Main Authors 堺, 立也, 齊藤, 峰輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2019
日本生物物理学会
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Summary:「1. はじめに」インフルエンザウイルスは, RNAを遺伝子とする直径100nmほどのエンベロープウイルスである. ウイルスは, エンドサイトーシスを利用して細胞内に侵入し, エンベロープとエンドソーム膜の融合によりウイルス粒子内部のRNAが細胞質に移行することで感染が成立する. ところで感染の場となる上気道では, 組織表面の大部分は繊毛に覆われており, 繊毛表面ではエンドサイトーシスは起きない. そこで, ウイルスは繊毛の基部やその付近の非繊毛細胞(分泌細胞や免疫系の細胞)といった比較的エンドサイトーシスをよく行う領域(標的部位)へ到達しなければならない. 一般にウイルスは, 細菌や真核生物が持つような運動能力は持たないとされているが, 呼吸器に吸い込まれたインフルエンザウイルスは, どのようにして繊毛に隠された標的部位に到達しているのだろうか. 我々は, インフルエンザウイルスがウイルス受容体を次々と交換することで細胞表面を運動する能力を持つことを見出した.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.59.324