11年間単純性嚢胞として治療された肝粘液性嚢胞性腫瘍の1切除例

症例は46歳女性, 11年前より肝内側区域~前区域に15cmの嚢胞性肝腫瘍を指摘され,近医にて肝嚢胞ドレナージおよび塩酸ミノサイクリン注入療法を繰り返し行われていた.2008年に腹部膨満感が増強し加療目的にて当科に紹介受診となった.腹部CT画像で嚢胞性病変は径22cmと増大し,多房性で一部石灰化を伴っていた.造影効果を伴う壁肥厚も認め,肝嚢胞腺腫または腺癌の診断で肝中央2区域切除術を施行した.摘出標本は多房性の嚢胞で,病理組織学的には悪性所見はなく卵巣様間質を伴っており,肝粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm of the liver:以下肝MCN)と診断した.術...

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Published inTando Vol. 29; no. 5; pp. 985 - 990
Main Authors 松本, 正成, 草塩, 公彦, 竹林, 三喜子, 宇田川, 郁夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 2015
Japan Biliary Association
Subjects
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ISSN0914-0077
1883-6879
DOI10.11210/tando.29.985

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Summary:症例は46歳女性, 11年前より肝内側区域~前区域に15cmの嚢胞性肝腫瘍を指摘され,近医にて肝嚢胞ドレナージおよび塩酸ミノサイクリン注入療法を繰り返し行われていた.2008年に腹部膨満感が増強し加療目的にて当科に紹介受診となった.腹部CT画像で嚢胞性病変は径22cmと増大し,多房性で一部石灰化を伴っていた.造影効果を伴う壁肥厚も認め,肝嚢胞腺腫または腺癌の診断で肝中央2区域切除術を施行した.摘出標本は多房性の嚢胞で,病理組織学的には悪性所見はなく卵巣様間質を伴っており,肝粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm of the liver:以下肝MCN)と診断した.術後7年経過した現在まで再発は認めていない.肝MCNの悪性度は様々であるが,完全切除を行えばその予後は一般的に良好であると言われている.本症例のように,単純性嚢胞の診断で治療されている症例の中には肝MCN症例が混在している可能性があり,本疾患を念頭に置き精査することが大切であると考えられた.
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.29.985