中心循環系血管内塞栓促進用補綴剤による肝動脈化学塞栓術後に発症した壊疽性胆嚢炎の1例
症例は70歳男性.B型肝硬変を背景とし,肝内側区域に多発肝細胞癌が認められた.腫瘍に対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を計5回施行し,stable diseaseであった.しかし6回目のTACEにて中心循環系血管内塞栓促進用補綴剤(以下,球状塞栓物質)を用いて動脈塞栓を施行したところ,その直後より腹痛および嘔吐を認めた.塞栓直後の腹部単純CTにて胆嚢壁に一致して球状塞栓物質の停滞を示唆する高吸収域が認められた.球状塞栓物質による胆嚢動脈の塞栓に伴う急性胆嚢炎と判断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理所見にて組織の浮腫および変性壊死の他,壁内の血管に球状物質による塞栓が認められ,壊疽性胆嚢炎と...
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Published in | Tando Vol. 30; no. 4; pp. 782 - 786 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本胆道学会
2016
Japan Biliary Association |
Subjects | |
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Summary: | 症例は70歳男性.B型肝硬変を背景とし,肝内側区域に多発肝細胞癌が認められた.腫瘍に対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を計5回施行し,stable diseaseであった.しかし6回目のTACEにて中心循環系血管内塞栓促進用補綴剤(以下,球状塞栓物質)を用いて動脈塞栓を施行したところ,その直後より腹痛および嘔吐を認めた.塞栓直後の腹部単純CTにて胆嚢壁に一致して球状塞栓物質の停滞を示唆する高吸収域が認められた.球状塞栓物質による胆嚢動脈の塞栓に伴う急性胆嚢炎と判断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理所見にて組織の浮腫および変性壊死の他,壁内の血管に球状物質による塞栓が認められ,壊疽性胆嚢炎と診断した.術後経過良好で術後8日目に退院した.球状塞栓物質使用後の壊疽性胆嚢炎の報告は今までに無く,若干の文献的考察を加えて報告する. |
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ISSN: | 0914-0077 1883-6879 |
DOI: | 10.11210/tando.30.782 |