非観血的ヘモグロビン測定法の献血事前検査への導入についての検討
目的:最近,近赤外線分光画像計測法が,非観血的に血中ヘモグロビン量を測定可能であることで注目されている.今回我々は,本法が,将来献血前の血中ヘモグロビン値測定に利用しうるか否かについて予備的検討を行った.方法:近赤外線分光画像計測器は,シスメックス株式会社製のアストリムを使用した.同一献血者で,このアストリムで測定した血中ヘモグロビン値と,従来の採血血液を用いて測定した血中ヘモグロビン値を比較した.対象:4群合計258名で,第1群43名は献血ルーム(室温22°C)で測定した.第2群73名は移動採血車1(気温26°C)で測定した.第3群86名は移動採血車2(気温24°C)で測定した.第4群56名...
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Published in | 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 4; pp. 494 - 499 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
2009
日本輸血・細胞治療学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1881-3011 1883-0625 |
DOI | 10.3925/jjtc.55.494 |
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Summary: | 目的:最近,近赤外線分光画像計測法が,非観血的に血中ヘモグロビン量を測定可能であることで注目されている.今回我々は,本法が,将来献血前の血中ヘモグロビン値測定に利用しうるか否かについて予備的検討を行った.方法:近赤外線分光画像計測器は,シスメックス株式会社製のアストリムを使用した.同一献血者で,このアストリムで測定した血中ヘモグロビン値と,従来の採血血液を用いて測定した血中ヘモグロビン値を比較した.対象:4群合計258名で,第1群43名は献血ルーム(室温22°C)で測定した.第2群73名は移動採血車1(気温26°C)で測定した.第3群86名は移動採血車2(気温24°C)で測定した.第4群56名は移動採血車3(気温12°C)で測定した.成績:4群合計258名の平均では,アストリムで測定した血中ヘモグロビン値と,従来の採血した血液を用いて測定した血中ヘモグロビン値との間には有意差はなく,相関係数は0.65であった.各群毎に検討すると,気温または室温が20°C以上の第1群から第3群では両者の測定値間には有意差はなかった.この3群合計202例で,観血的測定法と非観血的測定法で共にカットオフ値を12.5g/dlとした場合,献血可否判定の一致度の検定でκ係数が0.65となり,可否判定は実質的に一致していた.気温が12°Cであった第4群では,両者の測定値間に有意差を認めた.第1群から第3群の202例のROC解析では,アストリムで測定した血中ヘモグロビン値が14.6g/dl以上ですべて献血可となり,11.4g/dl以下ですべて献血不可と判定された.これを実際の測定値で検討すると,202例中100例でアストリムで献血可否判定ができ,誤判定は1例のみであった.結論:アストリムで測定した血中ヘモグロビン値と,従来の採血血液を用いて測定した血中ヘモグロビン値との間には良好な相関関係があり,気温が20°C以上であれば献血可否判定は実質的に一致した.気温が低いと両者の測定値間の相関関係が悪化した.ROC解析で検討すると,約半数の例で,非観血的に献血可否判定ができた.すなわち,気温または室温に配慮して,非観血的血中ヘモグロビン値測定法と直接採血法を併用して献血の可否を判定すれば,事前採血に伴う献血者と採血側の負担を減らすことができると考えられた. |
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ISSN: | 1881-3011 1883-0625 |
DOI: | 10.3925/jjtc.55.494 |