小林ら“気管分岐部へ進展する中心型扁平上皮癌に対して光線力学的治療,管状肺葉切除,陽子線治療で根治を得た1例”

中心型扁平上皮癌は, 多くは気管支鏡の可視範囲に腫瘍が存在するために生検などで診断することは容易であるが, 腫瘍が気管支粘膜に沿って表層進展を認める場合はその浸潤範囲を正確に診断することは比較的難しい. 理由としては, 軽微な変化では腫瘍浸潤と非特異的変化の区別が難しいこと, 気管支鏡の解像度の問題あるいは部位によっては観察方向が接線方向あるいは斜め方向になるために正常粘膜と腫瘍浸潤との境界をとらえにくいことなどがあると思われる. しかし, 最近は白色光による気管支の既存構造の分析に加えて, 自家蛍光観察(Autofluorescence Imaging: AFI)や狭帯域光観察(Narrow...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 38; no. 2; p. 83
Main Author 山田, 玄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2016
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.38.2_83

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Summary:中心型扁平上皮癌は, 多くは気管支鏡の可視範囲に腫瘍が存在するために生検などで診断することは容易であるが, 腫瘍が気管支粘膜に沿って表層進展を認める場合はその浸潤範囲を正確に診断することは比較的難しい. 理由としては, 軽微な変化では腫瘍浸潤と非特異的変化の区別が難しいこと, 気管支鏡の解像度の問題あるいは部位によっては観察方向が接線方向あるいは斜め方向になるために正常粘膜と腫瘍浸潤との境界をとらえにくいことなどがあると思われる. しかし, 最近は白色光による気管支の既存構造の分析に加えて, 自家蛍光観察(Autofluorescence Imaging: AFI)や狭帯域光観察(Narrow Band Imaging: NBI)などの画像強調観察が導入され, 内視鏡的な診断精度が向上しつつある. 本論文は, 右上葉B3に発生した扁平上皮癌が気管支の表層を主体に浸潤し, 中枢側は気管分岐部を経て左主気管支入口部に及び, 末梢側は中間気管支幹の入口部まで進展した症例に対して手術を含む集学的な治療を行った結果, 根治を得ることができたとする症例報告である. 考察でも述べられているが, 根治的な手術を考慮すると右肺の広範な切除と難易度の高い気管分岐部再建術を行うことになるため, 手術のリスクが高まるとともに, 術後のQOLの低下が懸念される. 筆者らはAFIを用いて腫瘍の範囲を推定し, 表層進展の部分に光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)を加えて, 腫瘍の浸潤範囲を縮小した後に, 右上葉管状切除を行った. PDTは腫瘍親和性光感受性物質と低出力レーザー照射により腫瘍を選択的に壊死させる内視鏡的な治療で, 以前は気管支鏡の可視範囲に発生した早期肺癌の治療に用いられていたが, 現在は非早期癌にも適応が拡大している. 利点は低侵襲で末梢肺機能を温存できることであり, 本症例では切除範囲の縮小を目的に使用している. 結果的には術中病理組織で断端に腫瘍細胞を認めたために術後に陽子線治療を追加しているが, 気管支粘膜の表層進展により拡大した腫瘍に対する有効な治療方法と思われる. また, 気管支粘膜を浸潤する癌の深達度を正確に推定する方法の開発が今後の課題と思われた. 右上葉発生のStage IIIB扁平上皮癌に対してPDT, 手術, 放射線療法の3つの治療を組み合わせることで根治に導くことができたとする本論文には学ぶべきことが多い.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.38.2_83