精神疾患におけるマイクロステート解析の有用性

定量脳波検査は非侵襲でありながら神経細胞の活動電位を測定できるという点で数多くの脳画像研究に応用され, 多くの解析方法が利用されている。その中でもLehmannらによって発表されたMicrostate segmentation解析は, 脳波計測から得られたデータをクラスター解析し, ほぼ安定したtopographyが連続して出現する区間やその切り替わり方を解析することで, 脳活動の電気的最小単位であるMicrostate segmentationを決定する解析手法である。このmicrostateの一連のマップの時間的変化は情報処理過程の特定の「段階」や「内容」を反映しているといわれ, Lehm...

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Published inJapanese Journal of Clinical Neurophysiology Vol. 47; no. 3; pp. 163 - 167
Main Authors 西田, 圭一郎, 吉村, 匡史, 池田, 俊一郎, 北浦, 祐一, 木下, 利彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床神経生理学会 01.06.2019
Japanese Society of Clinical Neurophysiology
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ISSN1345-7101
2188-031X
DOI10.11422/jscn.47.163

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Summary:定量脳波検査は非侵襲でありながら神経細胞の活動電位を測定できるという点で数多くの脳画像研究に応用され, 多くの解析方法が利用されている。その中でもLehmannらによって発表されたMicrostate segmentation解析は, 脳波計測から得られたデータをクラスター解析し, ほぼ安定したtopographyが連続して出現する区間やその切り替わり方を解析することで, 脳活動の電気的最小単位であるMicrostate segmentationを決定する解析手法である。このmicrostateの一連のマップの時間的変化は情報処理過程の特定の「段階」や「内容」を反映しているといわれ, Lehmannらは「思考の原子 (the atoms of thought) 」として, 意識の内容を形作る基本的なブロックであると提唱した。多くの研究では, 4つのマイクロステートトポグラフィを用いていることが多く, Microstate Aはright-frontal から left-posteriorにかけて, Microstate Bは, left-frontal からright-posteriorにかけて, Microstate Cはfrontal からoccipitalにかけて, Microstate Dは主に, frontal and medialにかけて広がるmappingとされている。近年, 脳波とfMRIとの同時計測データを解析することで, 各トポグラフィについてさらに生理学的意味が明らかになっている。まだ, 議論の余地はあるが, Microstate Aは聴覚回路, Microstate Bは視覚回路, Microstate Cは認知制御回路や一部のデフォルトモードネットワーク, Microstate Dは背部注意回路との関係が示唆されている。多くの神経疾患, 精神疾患において, マイクロステートの変化が指摘されており, 統合失調症の研究ではMicrostate Dの低下が指摘されたり, その他, 認知症, パニック障害, ナルコレプシーなど多くの精神疾患, 神経疾患でのマイクロステートの変化が報告されている。今後, さらに時間分解能が優れた検査法である脳波検査を全脳的に解析できるマイクロステート解析にて更なる病態生理の解明が望まれる。
ISSN:1345-7101
2188-031X
DOI:10.11422/jscn.47.163