岐阜県東濃地区における『喘息死ゼロ作戦』の軌跡とその成果

〔目的と背景〕厚生労働省立案の『喘息死ゼロ作戦』達成には,治療ガイドラインの周知と吸入ステロイド薬を適切に早期使用することが重要である。しかし,専門医数が極めて少ない地区で『喘息死ゼロ作戦』の展開には限界がある。岐阜県医師会東濃ブロックで組織した東濃喘息対策委員会は,病・診・薬・行政介護の4層構造連携システムを独自に構築し活動3年目になった。今回これまでの活動成果を検討した。 〔方法〕喘息カードを媒介とした病診連携や講演会等を通じたガイドラインの周知を行なう第1層,薬剤師対象の吸入指導セミナーを介した医薬連携の第2層,救急隊との連携の第3層,介護職との協力体制の確立を目指す第4層構造を構築し,...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 59; no. 4; pp. 482 - 492
Main Author 大林, 浩幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2010
日本農村医学会
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.59.482

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Summary:〔目的と背景〕厚生労働省立案の『喘息死ゼロ作戦』達成には,治療ガイドラインの周知と吸入ステロイド薬を適切に早期使用することが重要である。しかし,専門医数が極めて少ない地区で『喘息死ゼロ作戦』の展開には限界がある。岐阜県医師会東濃ブロックで組織した東濃喘息対策委員会は,病・診・薬・行政介護の4層構造連携システムを独自に構築し活動3年目になった。今回これまでの活動成果を検討した。 〔方法〕喘息カードを媒介とした病診連携や講演会等を通じたガイドラインの周知を行なう第1層,薬剤師対象の吸入指導セミナーを介した医薬連携の第2層,救急隊との連携の第3層,介護職との協力体制の確立を目指す第4層構造を構築し,『喘息死ゼロ作戦』への効果を,吸入ステロイド薬処方量と対10万人喘息死亡者数の変化で評価した。 〔結果〕地区内の吸入ステロイド薬の処方量が活動前の約2倍となった。薬剤師対象の吸入指導セミナーは地区内薬局の100%の受講を得,良質で均一な吸入指導体制の基礎が出来た。介護支援セミナーを通じ,介護職との協力体制も出来てきた。2回行なった市民公開講座はいずれも盛況で,市民啓蒙に貢献した。東濃地区喘息死亡者は平成10年度の4.13人/10万人から平成20年度には0.81人/10万人と大きく減少し,平成20年度岐阜県全体の1.17人/10万人と比較しても良好な結果を得た。 〔結論〕東濃喘息対策委員会の構築した4層構造の連携システムは,専門医が少ない地区でも,喘息死を確実に減らせる可能性がある。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.59.482