擬態語により創発される情動空間の脳内表現-fMRIによる笑いと痛みのクオリアの検討

閉眼時に聴覚的に提示されたゲラゲラなどの擬態語によって喚起される笑いの表情は高次視覚野である舌状回 (LG) と上前頭回の前運動野 (PM) ・補足運動野 (SMA) を選択的に活性化することがfMRIを用いた実験で明らかになった.LGは笑い顔の視覚認知とかかわり, PM/SMAは笑い顔の行為的生成とかかわっており, 刺激と反応のカップリングが同時に脳内に表現されていることが示された.脳はLGおよびPM/SMAに笑いのモジュールをもつことがわかった.無意味綴りによるコントロール課題下ではそのような活性化は生じなかった.一方, ズキズキなどの認知的な痛みを含意する擬態語は前部帯状回 (ACC)...

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Published in生理心理学と精神生理学 Vol. 23; no. 1; pp. 5 - 10
Main Authors 苧阪, 満里子, 苧阪, 直行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理心理学会 30.04.2005
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ISSN0289-2405
2185-551X
DOI10.5674/jjppp1983.23.5

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Summary:閉眼時に聴覚的に提示されたゲラゲラなどの擬態語によって喚起される笑いの表情は高次視覚野である舌状回 (LG) と上前頭回の前運動野 (PM) ・補足運動野 (SMA) を選択的に活性化することがfMRIを用いた実験で明らかになった.LGは笑い顔の視覚認知とかかわり, PM/SMAは笑い顔の行為的生成とかかわっており, 刺激と反応のカップリングが同時に脳内に表現されていることが示された.脳はLGおよびPM/SMAに笑いのモジュールをもつことがわかった.無意味綴りによるコントロール課題下ではそのような活性化は生じなかった.一方, ズキズキなどの認知的な痛みを含意する擬態語は前部帯状回 (ACC) を選択的に活性化した.以上の結果は, LG・PM・SMAはポジティブな情動である笑いと, ACCはネガティブな情動である痛みのイメージ形成にかかわることを示している.擬態語がトップダウン的に関連脳内情動モジュールを選択的に活性化し, 擬態語がシャープな脳内情動空間の探索手段となることが判明した.
ISSN:0289-2405
2185-551X
DOI:10.5674/jjppp1983.23.5