水中歩行のバイオメカニクス
水中運動は健康の保持増進を目的とした運動療法の一手段である. 水中運動では, (1)身体の生理学的特性に対して静水圧や水温が, また(2)バイオメカニクス的特性に対して浮力や水抵抗が, それぞれ影響する. 水の特性によって得られる生理学的効果は, 循環, 代謝系を中心として多くの研究がある. 例えば, 水中での安静立位時には静水圧が作用することにより胸郭は圧迫され, 肺活量および残気量はそれぞれ空気中の90%, 80%に減少する11). このため呼吸不全の強い患者に処方するには十分な注意を要するが, この静水圧に抗しての呼吸訓練あるいは水中呼気訓練は閉塞性肺疾患への最良な運動療法としても位置づ...
Saved in:
Published in | リハビリテーション医学 Vol. 42; no. 2; pp. 138 - 147 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本リハビリテーション医学会
2005
日本リハビリテーション医学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0034-351X 1880-778X |
DOI | 10.2490/jjrm1963.42.138 |
Cover
Summary: | 水中運動は健康の保持増進を目的とした運動療法の一手段である. 水中運動では, (1)身体の生理学的特性に対して静水圧や水温が, また(2)バイオメカニクス的特性に対して浮力や水抵抗が, それぞれ影響する. 水の特性によって得られる生理学的効果は, 循環, 代謝系を中心として多くの研究がある. 例えば, 水中での安静立位時には静水圧が作用することにより胸郭は圧迫され, 肺活量および残気量はそれぞれ空気中の90%, 80%に減少する11). このため呼吸不全の強い患者に処方するには十分な注意を要するが, この静水圧に抗しての呼吸訓練あるいは水中呼気訓練は閉塞性肺疾患への最良な運動療法としても位置づけられている23, 24). また, 水位が首まで浸かっている状態での安静立位時における心臓循環系反応は, 1回心拍出量, 心拍出量ともに約30%程度増加し, 逆に心拍数は減少する2). このため, 心拍数を基にした水中運動での運動強度は過小評価する可能性もある. 水温について, 水の熱伝導度は空気より高く, 水中では空気中の約25倍あり, 水温が低い場合の体温喪失は非常に大きい. |
---|---|
ISSN: | 0034-351X 1880-778X |
DOI: | 10.2490/jjrm1963.42.138 |