膜電位イメージングで見えるようになったもの

「1. 脳の情報処理と海馬神経可塑性の計測」 カール・セーガン(Carl Segan)の「コスモス」(1980)にもあるように, ヒトの脳は銀河系を構成する星の数と同等の(10×1011個もの)神経細胞が, 互いに軸索や樹状突起の枝を伸ばして回路を作り, 信号を伝え合う情報処理器官である. そして同書で引用されているCharles Sherringtonが極めて詩的な比喩で描いたような(Man On His Nature, 1942)神経間の交信やその情報処理の仕組みはわかっていない. 銀河系の恒星の数ほどの神経細胞, さらに, 神経細胞間の伝達装置であるシナプスをアナログスイッチと考えると,...

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Published in生物物理 Vol. 61; no. 6; pp. 404 - 408
Main Authors 冨永, 洋子, 梶原, 利一, 冨永, 貴志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2021
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.61.404

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Summary:「1. 脳の情報処理と海馬神経可塑性の計測」 カール・セーガン(Carl Segan)の「コスモス」(1980)にもあるように, ヒトの脳は銀河系を構成する星の数と同等の(10×1011個もの)神経細胞が, 互いに軸索や樹状突起の枝を伸ばして回路を作り, 信号を伝え合う情報処理器官である. そして同書で引用されているCharles Sherringtonが極めて詩的な比喩で描いたような(Man On His Nature, 1942)神経間の交信やその情報処理の仕組みはわかっていない. 銀河系の恒星の数ほどの神経細胞, さらに, 神経細胞間の伝達装置であるシナプスをアナログスイッチと考えると, その数はさらに千-1万倍(1015=100兆個)にもなる. この複雑な回路が物事を「記憶」する仕組みが神経回路の「可塑性」である. 神経の「可塑性」は19世紀にSantiago Ramon y Cajalが提唱し(Croonian Lecture(英国王立協会の名誉ある講義), 1894), Donald O Hebbが記憶・学習を成立させる条件として想定した(1949年).
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.61.404