腸内シュウ酸分解菌で働くシュウ酸輸送体の分子メカニズム

「1. はじめに」私たちは, 腸内に生息している数千種から数万種とも言われる腸内細菌とともに生きている. 私たちの健康も, 腸内細菌叢により影響を受けている. その1つの例が, シュウ酸代謝と腸内シュウ酸分解菌との関わりである. シュウ酸は, ホウレンソウなどの葉菜類・お茶・ナッツ類などに含まれ, 日々の食事を通して私たちの体内に摂取される. このシュウ酸は, 消化管あるいは腎臓・尿路系を介して体外に排出されるが, 過剰なシュウ酸は, カルシウムイオンと不溶性の塩を形成し, 三大激痛の1つとも呼ばれる尿路結石症を引き起こす原因となる. 腸内に生息するシュウ酸分解菌Oxalobacter for...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 1; pp. 25 - 27
Main Authors 山下, 敦子, 岡崎, 圭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.25

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Summary:「1. はじめに」私たちは, 腸内に生息している数千種から数万種とも言われる腸内細菌とともに生きている. 私たちの健康も, 腸内細菌叢により影響を受けている. その1つの例が, シュウ酸代謝と腸内シュウ酸分解菌との関わりである. シュウ酸は, ホウレンソウなどの葉菜類・お茶・ナッツ類などに含まれ, 日々の食事を通して私たちの体内に摂取される. このシュウ酸は, 消化管あるいは腎臓・尿路系を介して体外に排出されるが, 過剰なシュウ酸は, カルシウムイオンと不溶性の塩を形成し, 三大激痛の1つとも呼ばれる尿路結石症を引き起こす原因となる. 腸内に生息するシュウ酸分解菌Oxalobacter formigenesは, シュウ酸を唯一の炭素源として菌体内に吸収し, 代謝分解産物であるギ酸の形で菌体外に排出する. その結果, 私たち宿主の腎臓・尿路系側に排出されるシュウ酸量を下げることで, 尿路結石症発症リスクの軽減に貢献している.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.25