大腸菌L-formの増殖における外膜の重要性

「1. はじめに」枯草菌に代表されるグラム陽性菌は細胞膜の外側を細胞壁に覆われている. 一方, 大腸菌に代表されるグラム陰性菌は細胞膜(内膜)の外側に細胞壁があり, さらにその外側も膜(外膜)で覆われている. このように多くのバクテリアの表層は二層または三層構造になっている. 細胞壁は(1)細胞形態を決定するだけでなく, (2)膨圧のために細胞が破裂することを防ぐための物理的な障壁として機能する. したがって, 細胞壁こそがバクテリアが生存するために最も重要な構造物であると考えられてきた. そのため, ペニシリンやバンコマイシンなど多くの抗菌薬が細胞壁合成経路を標的としており, これらの抗菌薬...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in生物物理 Vol. 63; no. 1; pp. 27 - 29
Main Authors 大島, 拓, 塩見, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2023
日本生物物理学会
Online AccessGet full text
ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.63.27

Cover

Loading…
More Information
Summary:「1. はじめに」枯草菌に代表されるグラム陽性菌は細胞膜の外側を細胞壁に覆われている. 一方, 大腸菌に代表されるグラム陰性菌は細胞膜(内膜)の外側に細胞壁があり, さらにその外側も膜(外膜)で覆われている. このように多くのバクテリアの表層は二層または三層構造になっている. 細胞壁は(1)細胞形態を決定するだけでなく, (2)膨圧のために細胞が破裂することを防ぐための物理的な障壁として機能する. したがって, 細胞壁こそがバクテリアが生存するために最も重要な構造物であると考えられてきた. そのため, ペニシリンやバンコマイシンなど多くの抗菌薬が細胞壁合成経路を標的としており, これらの抗菌薬によってバクテリアは溶菌する. ところが, 抗菌薬を添加しても, 集団中の一部の細胞は細胞壁を失っても増殖を続けられる状態(L-formと呼ばれる)となる. L-formへの変換はグラム陽性菌でもグラム陰性菌でも起こる.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.63.27