糸状菌のライフサイクルにおけるダイナミックな生体膜組成変動
「1. 糸状菌の生活環と細胞形態」 糸状菌は長い糸状の細胞形態を特徴とする真核微生物であり, 一般的に「カビ」と呼ばれる. 糸状菌の一般的な増殖様式である無性生活環は, 2-3μmほどの球状の無性胞子である分生子からスタートする. 最初に, 球状の分生子が等方的に生長する無極性生長により, 球形を保ったまま4-5μmまで大きくなる. その後, 細胞内に極性が確立されて発芽し, 菌糸生長が行われて糸状形態の細胞が形成される. 固体培地上では, 一定時間以上の菌糸生長が行われた後, 空気中へと菌糸が伸長し, 分生子を新たに産生する器官(分生子形成器官)を分化させる. 糸状形態で伸長する間, 細胞壁...
Saved in:
Published in | 生物物理 Vol. 64; no. 2; pp. 97 - 99 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2024
日本生物物理学会 |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 「1. 糸状菌の生活環と細胞形態」 糸状菌は長い糸状の細胞形態を特徴とする真核微生物であり, 一般的に「カビ」と呼ばれる. 糸状菌の一般的な増殖様式である無性生活環は, 2-3μmほどの球状の無性胞子である分生子からスタートする. 最初に, 球状の分生子が等方的に生長する無極性生長により, 球形を保ったまま4-5μmまで大きくなる. その後, 細胞内に極性が確立されて発芽し, 菌糸生長が行われて糸状形態の細胞が形成される. 固体培地上では, 一定時間以上の菌糸生長が行われた後, 空気中へと菌糸が伸長し, 分生子を新たに産生する器官(分生子形成器官)を分化させる. 糸状形態で伸長する間, 細胞壁合成酵素や膜成分を供給するために菌糸先端に向けて活発な小胞輸送が行われている. 小胞内部には様々な分泌タンパク質が含まれ, 菌糸先端からはこれらタンパク質が活発に分泌されている. この性質を利用して, 糸状菌には食品製造(日本酒醸造, 味噌醸造, 醤油醸造など)・酵素製剤製造に使われる種が存在する. |
---|---|
ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
DOI: | 10.2142/biophys.64.97 |