意識障害患者に感染症があるかどうかを推測するための,年齢,心拍数,呼吸数,収縮期血圧を用いた新しい指標「HAR/S」の提唱

感染症は意識障害の原因になることが知られているが,体温が高くない意識障害患者では感染症が想起されにくく,感染症の診断・治療が遅れることがある。そこで意識障害で搬送された患者の年齢とバイタルサイン(血圧,心拍数,体温,呼吸数,SpO2)からROC曲線下面積(AUROC,≧0.7で有用とする)と層別尤度比(SSLR,<0.2又は>5で有用とする)を求め,感染症を想起するための体温より有用な指標がないか検討をした。2011~2014年に15歳以上で意識障害を主要症候に当院へ救急搬送された1,853例のうち感染症は451例(24.3%)に認めた。感染症の弁別におけるAUROC≧0.7は体温のみ(AUR...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 68; no. 4; pp. 450 - 459
Main Authors 西本, 泰浩, 畑田, 剛, 小林, 修一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2019
日本農村医学会
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Summary:感染症は意識障害の原因になることが知られているが,体温が高くない意識障害患者では感染症が想起されにくく,感染症の診断・治療が遅れることがある。そこで意識障害で搬送された患者の年齢とバイタルサイン(血圧,心拍数,体温,呼吸数,SpO2)からROC曲線下面積(AUROC,≧0.7で有用とする)と層別尤度比(SSLR,<0.2又は>5で有用とする)を求め,感染症を想起するための体温より有用な指標がないか検討をした。2011~2014年に15歳以上で意識障害を主要症候に当院へ救急搬送された1,853例のうち感染症は451例(24.3%)に認めた。感染症の弁別におけるAUROC≧0.7は体温のみ(AUROC 0.701)であったが,体温においてSSLR<0.2となる階層はなく,体温が低くても感染症が除外できないことが確認された。そこでAUROC 0.65以上の項目から作成した心拍数(回/分),年齢(歳),呼吸数(回/分)の積を収縮期血圧(mmHg)で除したHAR/Sという新指標を用いると,AUROCが0.809と高く,HAR/S<700の階層でSSLR 0.190<0.2となった。HAR/S 700以上は意識障害で救急搬送された患者において,体温にかかわらず感度0.911,特異度0.468,陰性的中率0.941で感染症を想起する新しい指標になり得る。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.68.450