頭部外傷の病態と治療

「はじめに」外傷による死亡は解決すべき世界共通の問題である. 2014年のWHOレポートによると, 外傷による死亡者数は全世界でおよそ年間500万人とされ, 全死亡原因の9%にあたる. これはHIV/AIDS, 結核, マラリアによる総死亡者数の1.7倍にも匹敵する. また15歳~29歳の若年者死亡原因の第1位が交通外傷であり, 生産年齢人口を減ずる要因にもなっている. 発展途上国, 特にモータリゼーションが急速に進んでいるインドやカンボジアなどでは, この10年間で交通事故死亡患者が1.5~2倍に増加しており, 救急医療体制の確立が急務とされている. このように外傷患者の増加は, 医療・経済...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 15; no. 2; pp. 71 - 79
Main Authors 横堀, 將司, 横田, 裕行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.04.2019
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Summary:「はじめに」外傷による死亡は解決すべき世界共通の問題である. 2014年のWHOレポートによると, 外傷による死亡者数は全世界でおよそ年間500万人とされ, 全死亡原因の9%にあたる. これはHIV/AIDS, 結核, マラリアによる総死亡者数の1.7倍にも匹敵する. また15歳~29歳の若年者死亡原因の第1位が交通外傷であり, 生産年齢人口を減ずる要因にもなっている. 発展途上国, 特にモータリゼーションが急速に進んでいるインドやカンボジアなどでは, この10年間で交通事故死亡患者が1.5~2倍に増加しており, 救急医療体制の確立が急務とされている. このように外傷患者の増加は, 医療・経済を圧迫する世界的問題である. 外傷の中でも特に頭部外傷患者の頻度は高い. 日本外傷データバンク(Japan Trauma Data Bank, JTDB)の報告では, 2012年から2016年の4年間で, 入院を要した頭部外傷患者は20,830人であり, 骨折など下肢外傷の発生率とほぼ同等であった.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.15.71