胎児性水俣病患者の現在のActivity of Daily Living (ADL) 実態と15年前との比較およびコミュニケーション障害に関する研究

緒言 水俣病は,アセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物が工場廃水とともに排出されて周辺水域を汚染し,メチル水銀が高度に蓄積された魚介類を摂取することによって起きたメチル水銀中毒症であり(1),環境への配慮を欠いた産業活動がもたらした公害の原点となっている.また,メチル水銀汚染が最も激しかった時期(1955~1959年)には,母親が妊娠中にメチル水銀の曝露を受けて,脳性麻痺様の障害を引き起こす典型的胎児性水俣病も発生し(2),メチル水銀汚染の恐ろしさを世界に知らしめた.また,この時期には男児の死産増に伴うであろう男児の出生性比の低下も起こっていた(3).水俣病の公式発見は脳症状を主...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 62; no. 3; pp. 905 - 910
Main Authors 有村, 公良, 坂本, 峰至, 加藤, たけ子, 岡元, 美和子, 劉, 暁潔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2007
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.62.905

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Summary:緒言 水俣病は,アセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物が工場廃水とともに排出されて周辺水域を汚染し,メチル水銀が高度に蓄積された魚介類を摂取することによって起きたメチル水銀中毒症であり(1),環境への配慮を欠いた産業活動がもたらした公害の原点となっている.また,メチル水銀汚染が最も激しかった時期(1955~1959年)には,母親が妊娠中にメチル水銀の曝露を受けて,脳性麻痺様の障害を引き起こす典型的胎児性水俣病も発生し(2),メチル水銀汚染の恐ろしさを世界に知らしめた.また,この時期には男児の死産増に伴うであろう男児の出生性比の低下も起こっていた(3).水俣病の公式発見は脳症状を主訴とする2名の女児を含む4人の患者の入院収容が水俣保健所に届けられた1956年5月1日である(2).以来,鹿児島・熊本を合わせて2,265名が水俣病として認定され,内1,582名が死亡している(2006年5月現在).生存者についても高齢化が進んでおり加齢に伴う症状の悪化が懸念されている(4).
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.62.905