下垂体腺腫組織における組織酸素分圧低下の生物学的意義
酸素は有核細胞の成長や生存維持に必須であることは言を待たない. 酸素欠乏状態は生体の死亡を意味するからである. 近年正常細胞における低酸素応答の機構が肺や心臓といった臓器単位での反応とは別に分子レベルでも存在することが徐々に明らかとなってきた. 例えばヒマラヤやアンデス山脈に生活する人々の血清ヘマトクリットが高値をとることは以前より知られていたが, これは血管内皮細胞の酸素センサーが血液の低酸素状態を感知することでerythropoietin(Epo)遺伝子への転写活性が上昇することでerythropoietin蛋白が増加し赤血球産生を促進することに由来している事が明らかとなった. これは一般...
Saved in:
Published in | 日本医科大学医学会雑誌 Vol. 1; no. 3; pp. 110 - 116 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2005
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1349-8975 1880-2877 |
DOI | 10.1272/manms.1.110 |
Cover
Summary: | 酸素は有核細胞の成長や生存維持に必須であることは言を待たない. 酸素欠乏状態は生体の死亡を意味するからである. 近年正常細胞における低酸素応答の機構が肺や心臓といった臓器単位での反応とは別に分子レベルでも存在することが徐々に明らかとなってきた. 例えばヒマラヤやアンデス山脈に生活する人々の血清ヘマトクリットが高値をとることは以前より知られていたが, これは血管内皮細胞の酸素センサーが血液の低酸素状態を感知することでerythropoietin(Epo)遺伝子への転写活性が上昇することでerythropoietin蛋白が増加し赤血球産生を促進することに由来している事が明らかとなった. これは一般に高所順応という現象として理解されている. 別な観点から酸素は, ミトコンドリア呼吸鎖における最終電子受容体として働き, 酸化的リン酸化によるATPの効率的な産生を可能にする役割ゆえほとんどの生物の生存に必須の分子であることが判明している. しかし生体がいかに低酸素を含む酸素分圧の変化を感知し反応するか, 具体的に言えば酸素分圧センサー分子の実態は20世紀を通しても謎であり続けた. |
---|---|
ISSN: | 1349-8975 1880-2877 |
DOI: | 10.1272/manms.1.110 |